リケジョ重視の求人は男子軽視につながり不平等?

理系を専攻する女子学生を「リケジョ」というそうです。

昨今、メーカーによるリケジョ向け会社説明会が開催されるなど、確保に向けて力を入れる企業が目立ちはじめているというニュースがありました。多様化する顧客ニーズに対応するためという背景があるそうです。

これまでは、男性ばかり雇用され女性の就職が難しいという雇用機会の問題が取り沙汰されることがありましたが、今回のケースは全くその逆のように見え、同じく問題にならないのかと危惧されます。

リケジョを取り込もうとする企業の求人活動に問題がないか、弁護士の観点から検証してみたいと思います。

困る男

■原則、企業が誰を採用するかは自由

基本的には、企業が労働者の採用活動を行うにあたり、どういう人物をどのような待遇・条件で募集等をするかについては自由です。

雇用契約は、その企業の経済活動における「契約」の一種であることに変わりはありませんから、当事者同士(使用者と労働者)の合意が存在する限り、そこには契約自由の原則が働きます。

■例外的なケース

しかし、上記の原則の中で生ずる一部の不均衡を是正するために、法律は一定の制限を設けています。

その根拠となるのが『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律』、いわゆる『男女雇用機会均等法』です。

この法律はその目的を「男女の均等な機会及び待遇の確保」等と謳っていますが、端的に言えば、日本の「女性」の労働環境における不当な取り扱いを改善しましょう、ということです。

この法律では、原則、性別による不当な差別を禁止していますが、例外的に男女の均等な機会の確保等のために女性を有利に扱うことを認めており(第8条)、その限りでは適法と評価されることになります。

■「リケジョ」の場合は?

今回のケースに当てはめると、「リケジョ」向けの募集を行うこと、つまり理系の「女性」のみを対象とした採用活動を行うことは、例えば、ある企業において「職種や部署の男女比を見たら著しい不均衡があったため、その格差をなくすため女性を積極的に募集する」というようなことであれば、概して適法といえるでしょう。

但し、単に「男性より女性の方が向いている」「見た目が女性の方が適している」等の理由で一方の性別を不当に取り扱うことは、違法と評価されてしまう可能性があります。

企業の採用活動については、性別を問わず能力本位で行われるべきですが、日本の歴史的な背景を考慮すると、「リケジョ」への配慮も必要なのかもしれません。

*参考:「リケジョ」ほしい…人材確保にメーカー必死 「絶対数少ない」 (1/2ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)

山口 政貴 やまぐちのりたか

神楽坂中央法律事務所

東京都新宿区津久戸町4-1 ASKビル2-B号室

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