小保方さんプライバシー報道に違法性は?弁護士が解説

万能細胞STAPを開発し多くのメディアに採り上げられた理研発生・再生科学総合研究センター、小保方晴子さんのWebサイトに、報道関係者に向けてのメッセージが公開されました。

研究活動に支障の出るような報道については遠慮いただきたいといった趣旨の文面からは、これからより一層の研究が求められる当該研究分野への真摯な想いと浅はかな報道への失望が伺い知れるようです。メッセージ全文は参考リンクを見てみてください。

知人だけでなく近隣の住民にまで迷惑が及び心苦しい状態が続いているという告白などを参考に、メディア側の報道に違法性はないのか、検証してみたいと思います。

プライバシー問題

個人には、プライバシーの権利があります。

プライバシーとは私生活に関する情報です。プライバシーの権利とは、私生活をのぞき見されない権利であり、また私生活をみだりに公開されない権利です。

したがって、メディアが個人のプライバシーを取得したり開示したりする行為はプライバシーの権利を侵害することになります。

他方で、メディアには、報道の自由、取材活動の自由といった権利があります。

そこで、プライバシーの権利を侵害する表現行為(報道・取材活動)が行われた場合であっても、一定の場合には違法性が阻却されると解されています。

■どのような場合に違法性が退けられるか

どのような場合に違法性が阻却されるかですが、裁判では、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量して判断されるようです(最高裁平成元年(オ)第1649号同6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁)。

難しい判断ですが、要するに、色んな事情を考慮した上で、公表することによって皆のためになり、プライバシー侵害の程度もそれ程大きくない場合に違法性が阻却されるといった感じになるかと思います。

今回、研究者のプライバシーが問題となっています。政治家や芸能人や犯罪者のプライバシーではありません。記者会見の場に登場したのも研究成果の発表のためであって、芸能人のように目立ちたいがためではありません。政治家のように人格が問題とされる立場でもありません。犯罪者のように一定のプライバシーを晒されてもやむを得ない立場にあるというわけでもありません。

研究者のプライバシーは研究に関係のない範囲では通常人と同程度に保護されるべきと言えるでしょう。

■ケースによっては違法の可能性

したがって、研究者の経歴や研究に関わる人間関係を紹介する位であれば違法とまでは言えませんが、メディアが視聴者の興味を満足させるだけのために、本人の同意もなく、研究者の個人的な趣味・嗜好を報道したり、研究に全く関係のない個人的な人間関係を報道したりした場合には、公表する理由が認められない重大なプライバシー侵害として違法となるのではと考えます。

そして、メディアの報道が違法となる場合には、プライバシーを違法に侵害された者としては、

・損害賠償(慰謝料等)の請求

・謝罪広告の請求(名誉毀損に当たる場合)

・報道の事前差止(その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるとき)

といった対応を採ることが考えられます。

しかし、研究者は、研究に集中しなければならず、こうしたメディアへの対応や裁判の準備などする余裕もないはずです。

メディア側には、そうした事情も酌んで研究者の研究に支障を与えないようにする配慮が求められると考えます。

*参考:Obokata Lab/Cellular Reprogramming

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

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