野球のヤクルトスワローズが誇る強打者ウラディミール・バレンティン(29)が米フロリダ州で1月13日までにドメスティック・バイオレンス事件で逮捕されました。
週刊誌含め様々な憶測や事実が絡み合う中、その事件の影響を受ける人たちが少なくありません。
当然あるのが妻への慰謝料、また放映が見合わされた出演CMへの影響、そして所属する球団への損害、の3つの観点についてバレンティンが抱えるであろう法律トラブルについて、弁護士の私がまとめました。
■1:妻との関係については?
バレンティンは、既に妻との離婚の協議が始まっていたとのことです。ですので、妻の怪我の具合がわかりませんが、暴行を振るわれたというのは法律的にはあまり重要ではなく、世間へのアピールだと思います。
若干解説ですが、一般の方が使う「慰謝料」という言葉は、法的には正確ではありません。離婚に伴う財産的な請求には、「慰謝料」と「財産分与」という2種類があって、慰謝料というのは純粋に不法行為をしたことに対する精神的損害を指し、財産分与というのは別居時まで夫婦で協力しながら築き上げた財産を離婚を機に基本半分ずつ清算しましょうというものです。
ですので、暴行に対する慰謝料というのは、財産分与の額と比べれば、比になりません.というのも、バレンティンは、年俸8,000万円から、この1年の働きに寄って7億5,000万円にまで跳ね上がっており、これは妻の内助の功によるものだと言われることになるでしょう。
これまでの蓄えや来年1年の年俸の半分を寄越せ、と言う主張が出てくるのは容易に考えられます。一部報道では3億円という予想が出ているようですが、おそらくそれでは済まないことでしょう。
■2:キリンCMについては?
キリンは、バレンティンをCMに起用することによって、相当な売上高アップを狙っていたものと思います。
どの程度の売上高アップを狙っていたのかはキリンに聞いてみないと分かりませんが、バレンティンのCMを使用できなくなったことによって売り上げが伸びなかった、あるいは落ちたということであれば、その分が損害賠償請求額の対象になります。
またCM出演料として数億円という金額を支払っているでしょうから、それについても返還しろということになるでしょう。
■3:球団へのイメージダウンの影響
一昨年、楽天のジョーンズが同じように妻への暴行により逮捕されたことがありましたが、楽天入りに影響がなかったという事例がありました。その意味では、活躍を期待された選手に対して、退団処分などの厳しい処分はないものと思います。
ただバレンティンの今回の事件によって、ヤクルトの試合への観客動員数が減ったということになれば、それは球団の損害ですので、これをバレンティンの年俸へ反映させるか、あるいは減俸を今期のバレンティンの活躍次第で行うかどうかを留保する、等の措置は取られるものと思います。
■4:まとめ
活躍して有名になって年俸がうなぎ登りになると、その分周りから注目されて殿様気分になるのでしょうが、その反面、注目度の高さに比例する立場と責任が生まれます。
法律関係もより複雑になってきます。少しのことでも足元を救われます。そういう立場になった方は、より慎重に自らの行いを律していかなければならないでしょうね。偉くなるのも考えものです(笑)。