大手保育園で横行する労働基準法違反。親が保育園を訴えることはできるのか? 

今、「保育園落ちた日本死ね!!!」と題した匿名ブログが注目を集めるなど、保育園の問題が社会的に大きく取り上げられています。これを解決するための論点のひとつに、保育園で働く保育士の労働環境に起因する問題が挙げられます。

それでは、保育園に子どもを通わせる保護者が、保育園に対して保育士の労働環境を改善するよう訴えることはできるのでしょうか。

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■保育園を訴えることはできないが、安全配慮を求める権利はある

過酷な労働環境におかれている当事者である保育士は、労働基準法等で認められた労働者の権利として、保育園や労働基準監督署に対して、自身の労働環境を改善するよう求めることができるのは当然です。

しかしながら、当事者ではない園児の保護者としては、保育士に法律上保育士に認められた権利を保育士に代わって行使することは認められません。

もっとも、保育士の人数が足りず保育士一人あたりにかかる負担が大きいことなどが原因で、保育士が園児の面倒を十分にみることができず、その結果、保育士が目を離したすきに園児が思わぬ怪我をしてしまうといった事故が起こる危険性はあると思います。

この点、保育園は、保護者との間の保育契約に基づき、保護者や園児に対して、園児の生命や健康に配慮し、事故などが起こらないよう注意すべき義務(「安全配慮義務」と言います。)を負っていますので、保護者としては、保育園に対して、安全配慮義務を履行するよう求める権利はあります。

 

■安全配慮義務の具体的な要求は難しいが…

ただ、この安全配慮義務を履行するために、具体的にどのような内容の保育をしていくのかについては保育園側に自由な裁量があります。

そのため、保護者としては、保育園の実施する保育内容について適正な人数の保育士を配置しろとか、従業員に対してサービス残業をさせるなといった具体的な要求をすることまでは難しいでしょう。

ただし、明らかに園児の数に対して保育士の人数が圧倒的に少なく、過労等が原因で明らかに保育士が不十分な保育しかしていないような場合には、保育内容についての保育園側の裁量権を逸脱しているものとして、保育内容について具体的な要求をすることが可能な場合もあることは頭に入れておいてください。

 

*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)

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理崎 智英 りざきともひで

高島総合法律事務所

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