電車で無理やり席を奪われた・・・違法性はないの?

電車酒Ushico / PIXTA(ピクスタ)

電車内で優先席(あるいは優先席以外の座席でも)に座っていた人が、優先席を必要としている人または第三者から無理やり席を譲らされるケースがままあるようです。

今回は、自主的に席を譲った場合はともかく、席を譲るよう強要することははたして適法なのかどうかについて解説したいと思います。

 

●無理やり席を譲らせることは強要罪に当たる可能性がある

各鉄道会社が優先席を設けて「優先席を必要としている方に席をお譲りください」とアナウンスしているのはあくまで乗客に対するお願いであり、優先席を必要としている方に席を譲ることは法的義務ではありません。

したがって、優先席に座っている人に対して無理やり席を譲るよう要求することはできません。かえって、席を譲ってほしいと思う人、または周囲の第三者が以下のような行動をとると違法になります。

・暴行:腕をつかんで立たせたり、座っている人の足を蹴ったり等
・脅迫:「譲らないとひどい目に遭うぞ」、「座り続けるならば次の駅で降ろして駅員のところに一緒に行ってもらう」などと告げる等

これらの行為によって無理やり席を譲らせた場合、暴行罪や脅迫罪にとどまらず、強要罪(3年以下の懲役)に該当してしまいます。

 

●席を譲ってほしいときはどうしたらよいか

席を譲る義務がないということは、優先席を必要としている方であっても優先席に座る権利がないことを意味します。したがって、法的には、優先席に座っている人よりつらい状況にあったとしても、席を譲るよう要求できないということになってしまいます。

とはいえ、優先席を必要としている方に席を譲るマナーは周知・醸成されていますから、自分が座席を必要としている事情を説明してお願いすれば席を譲ってもらえることが多いはず(と信じたい)です。

相手の人となりがわからない電車内では席を譲るようお願いすることは勇気がいるかもしれませんが、一見して席に座る必要性のあることがわからない方の場合は座っている側が気付いていないだけということもありますので、声をかけてみたらすんなり譲ってもらえることがあると思います。

逆に、座りたいという事情を説明して断っても何の問題もありませんので、座っている人のほうも自分が優先席を必要としている事情を説明することが大事でしょう。

混む路線では多かれ少なかれ疲れていて座りたいという人ばかりでしょうが、寛容な心をもってお互いの事情を説明しあうようになればトラブルは起きないと思います。

 

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)

木川 雅博 きかわまさひろ

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1-21-8 弁護士ビル303

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