経営者の公私混同が招く「利益相反取引」弁護士が事例とともに解説!

このサイトの読者の方なら、「利益相反取引」という単語を一度は聞いたことがあるかもしれません。

会社の利益相反取引とは、取締役が会社の利益を犠牲にして、自分または第三者の利益を得る取引のことです。

とはいえ、具体的にどんな取引を指すのか、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。

今回は「利益相反取引」の具体的な相談事例をもとに、対策案などについてセンチュリー法律事務所の小林洋介弁護士に解説していただきます。

Q:相談事例

月刊誌等の企画、編集等を業とするA株式会社の取締役を務めておりますBと申します。

A社の代表取締役は、A社が窮境時に支援していただいたC社(主に印刷業を営んでいます。)の代表取締役社長Dが兼務しておりますが、A社の株主は、Dを含め全部で4人で、Dは20%程度の議決権しか有しておりません。

また、A社は取締役会設置会社であり、A社の取締役は、B、D、E、Fの全部で4人です。C社の株主はD一人です。

このたび、DはA社の取締役会決議を経ずに、独断でA社で企画した月刊誌の印刷業務をC社に発注していることが判明しました。発注金額はC社の言い値で、C社にかなり利益が出ているようです。A社の立場とすれば、他社見積もりとの比較もできず、不利な取引をさせられていたと感じています。DやC社に対して何か言えないでしょうか。

 

A:回答

取締役と会社との利益相反取引

まず、A社はDに対して何らかの請求ができないでしょうか。

本件では、A社の代表取締役であるDがAを代表して、同じく代表取締役であるC社に対して印刷業務を発注するという取引(以下「本件取引」といいます。)を行っています。

これは、取締役(D)が第三者(C社)のために株式会社(A社)と取引をする場合ですので、いわゆる「利益相反取引」に該当します(会社法356条1項2号)。

A社は取締役会設置会社ですので、A社取締役会において、本件取引につき重要な事実を開示し、取締役会の承認を受けなければなりません(会社法356条1項、同法365条1項)。

本件では、本件取引につき取締役会決議を経ずに取引が行われており、会社法に違反する法令違反行為を行ったものとして、A社はDに対して損害賠償請求することができます(会社法423条1項、同条3項)。

損害賠償額については、その取締役の行為によって会社が被った損害額とされており、本件では、本件取引の取引額からC社が負担した原価を引いた利益相当額が損害額と考えられるでしょう。

したがって、A社はDに対して上記利益相当額の損害賠償請求ができると考えられます。

 

利益相反取引の相手方との法律関係

それでは、A社はC社に対して何らかの請求ができないでしょうか。

判例によれば、取締役会決議のない利益相反取引は無効ですが、その無効は、相手方が取締役会決議のないことについて知っていれば(悪意であれば)、会社はその取引の無効を主張できるとされています(相対的無効説)。

本件では、C社の代表取締役のDが本件取引について取締役会決議がないことを知っていますので、C社は悪意といえます。

そうすると、相手方に対しては不当利得の返還請求がなし得るということになりますが、本件においてその具体的な金額は、Dに対する損害賠償請求額と同様に、本件取引の取引額からC社が負担した原価を引いた利益相当額になるでしょう。

したがって、A社はC社に対して上記利益相当額の返還請求ができると考えられます。

 

中小企業にもガバナンス機能は重要

中小企業である非上場会社でも、いわゆるオーナー会社(100%株主がいるような会社)ではなく、株主が分散している会社は多く存在しています。

一方で、非上場会社であるがゆえに、取締役会がそもそも開催されていなかったり、重要な経営情報が他の役員に共有されず、隠されてしまったりして、ガバナンス機能が果たされず、経営者の公私混同により企業価値を損ねてしまっている会社も少なくありません。

本件では、A社の社長Dの公私混同により、A社の企業価値(ひいてはA社株主)を害したことが問題ですが、企業価値向上ひいては中小企業の持続可能な成長のためにも、利益相反取引規制の順守が求められます。

 

著者:センチュリー法律事務所 小林洋介弁護士(東京弁護士会所属)
同じ類型のご相談でも、一つ一つのご相談には個性があり、解決策もさまざまです。それぞれのご相談の事情や時代の変化に対応して、既存の解決策や弁護士という枠組みにとらわれることなく、常に新しい解決策を提案し続け、最後まで解決していきます。お客様との出会いは「一期一会」と心得、誠心誠意対応いたします。
プロフィール:http://century-law.com/lawyers/yosuke_kobayashi

 

小林 洋介 こばやしようすけ

弁護士法人IGT法律事務所

東京都千代田区麹町4-3-3新麹町ビル6階

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