システム会社でSEとして勤務するNさんは、会社の対応に憤りを覚えています。参加したプロジェクトの仕事はきっちりこなし、常駐先から技術力を信頼されているのですが、所属する会社の評価は全く異なるものでした。
現場の人間から「離席が多い」と指摘されているというのです。Nさんはプログラム作成の際、頭を整理させるためにトイレやタバコに立ち、そこでじっくり考えることでいいアイディアが生まれ、仕事を成功させてきたそう。
あくまで仕事の一環と主張したNさんですが、会社は「信じられない」「仕事をしていない可能性がある」として、懲罰の意味も込めて年俸を下げると主張しています。このような「離席回数」を咎めた減給は許されるものなのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
Q.離席回数の多さを理由に年俸を下げようとする会社。これは違法では?
A.合法の可能性が高い
理崎弁護士:「まず、社員は就業時間中は会社の業務に専念しなければならない義務(職務専念義務)を負っています。
そのため、社員を職務に専念させるため、会社側が社員の離席の回数を制限すること自体は可能であり、会社が決めた回数以上離席する社員に対しては、会社が減給等の懲戒処分をすることも可能と考えます。
ただ、離席回数を制限することによって社員に与える不利益があまりにも大きい場合、そのような制限は違法だと判断される可能性があります。例えば「1日に1回5分程度の離席しか認めない」という制限は過度な制限であり、社員に与える不利益が大きいため違法になると考えます。
逆に「1日に1回5分程度の離席を認める」といった程度の制限であれば、社員に与える不利益もそこまで大きくはないので、合法だと考えます」
離席は職務専念義務違反に該当する可能性があるため、度を越えた回数の場合は懲戒処分の対象になってしまうようです。
しかしNさんの主張も、会社としては聞く耳を持つべきでしょう。
極論ですが、常駐先の言い分を100%信用し、自分の主張に耳を貸さず切り捨てるような会社は、さっさと辞めたほうがよいかもしれませんね。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)