最近多くの反響をいただいている、シェアしたくなる法律相談所の【実録】シリーズ!
今回は、私の友人から聞いたトンデモ話をご紹介します!
ことのはじまり
Sさんは結婚して4年目。やり手個人事業主の旦那さん(以下、Aさん)と息子の3人で、何不自由自由無い暮らしをしていました。
しかし、とあるきっかけで知人男性(以下Bさん)とダブル不倫の関係に発展してしまいます。
SさんとBさんのダブル不倫は半年以上継続し、しばらくするうちに
「お互い今の相手と離婚して結婚しよう」
という誓いを立てました。
…その後、ある日SさんはひょんなことからAさんに不倫関係がバレてしまいます。
Sさんはその際に離婚話を切り出すととともに家を出て、Bさんのもとへ向かいました。
そして、Aさんに不倫を打ち明けたこと、離婚したいと切り出したことを話しました。
ですが、Bさんの回答は、
「やっぱり僕には今の家内と離婚して、君と結婚する決断はできない…」
と、結婚を断られてしまいます。
かくしてSさんは、旦那のAさんにも不倫相手のBさんにも見捨てられてしまいました。
専業主婦だったSさんには手持ちのお金もありません。男も子供もすべてを失い茫然自失。
しばらくの間、実家に戻って空虚な生活を送っていましたが…。
1週間経ったある日、Aさんから連絡がありました。
「君がやり直す気があるのであれば、戻ってきてほしい、子供もお母さんに会いたがっているよ」
…と。
Aさんのイケメン具合ヤバくないですか!?
こんなにいい旦那さんがいるのに、不倫するなんてけしからんですよまったく!!
この連絡に、Sさんはもちろん大喜び。
急いで家に戻り、今ではまるで新婚さんかのようにAさんとの惚気話をするほどまで関係修復できたようです。
…しかし、話はこれだけで終わらないのです!
その後、トンデモ展開が待っていた!!
ここで終わってしまったら、
「ただただAさんがイケメンだった」
で終わってしまう話なんですよ。
本題はここから…。
なんとAさんとSさんのふたりは、「Bさんを訴える!」と言いはじめたそうです。
「あたしと旦那の仲を引き裂こうとたぶらかしたんだから慰謝料払え!」
って、いちゃもんをつけている訳ですね。
自分たちが幸せになっただけでは満足いかず、Bさんを訴えようとしているそのお前らの神経なんなんだよ!!
…さて、今回のケースで、SさんとAさんは訴訟を起こして果たして勝てるのでしょうか!?
そもそも、SさんとAさんは、Bさんを訴えることができるのでしょうか?
高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解をお伺いしました!
理崎弁護士:
まず、Sさんは不貞行為の当事者(加害者)なので、Bさんを訴えることはできません。
Aさんは、Bさんに対して不貞行為を理由とする慰謝料請求をすることができます。
次に、Sさんとしては、婚約破棄を理由とする慰謝料請求をすることが考えられます。
しかし、SさんとBさんが結婚を約束したのは、ダブル不倫中であり、そのような約束は法的には保護されないので(婚約が成立したとは言えない)、婚約破棄を理由とする慰謝料請求をすることも難しいでしょう。
――やはり、加害者であるSさんは訴えることができないようですね。
ただ、被害者であるAさんは訴えることができるみたいです。
ただ、Bさんの妻から反撃を食らうのではないかという可能性も浮上してきたので、こちらに関しても聞いてみました。
編集部:
訴えることによって、Bさんの妻から、Sさんが不倫慰謝料請求をされてしまうといった状況も考えられるかと思います。
その他、訴えることによってどのようなことが起こるのでしょうか。
理崎弁護士:
Bさんの妻としても、AさんがBさんに対してするのと同様に、Sさんに対して慰謝料請求をすることができます。AさんがBさんを訴えたことによって、SさんとBさんの不貞行為がBさんの妻に発覚してしまい、不貞の慰謝料請求のきっかけを与えてしまうということは十分にあり得る話です。
SさんもBさんも離婚はしないということであれば、AさんがBさんから慰謝料の支払いを受ける一方、Bさんの妻がSさんから慰謝料の支払いを受けるということは、結局、Sさん夫婦が受け取ったお金が、Bさん夫婦に戻るだけなので、夫婦の財布の紐が共通であるということを考慮すると、Aさんとしても、Bさんの妻としても、慰謝料請求の訴訟を起こすことはあまり意味がないかもしれません。
こちらが離婚しないのでは、訴訟の勝敗がどうあれどのみち意味がないように思えますね…。
ただ、ここで訴える側のSさんとAさんが手を組み、Bさんの夫婦関係を壊すという名目であれば、負けのないケンカを吹っかけていることになるのでは…?
やり手個人事業主のAさんはお金持ち。慰謝料払うだけで復讐できるのなら安いものなのではっ!?
理崎弁護士:
なお、SさんとAさんが結託して、Bさんの夫婦関係を壊すという不当な目的で訴訟を提起した場合であって、訴訟上そのような目的が立証された場合には、Bさんとしては、Sさん及びAさんに対して、不当請求を理由とする慰謝料請求が認められる余地があります。
…さすがにそんなことが許されないようになっているようです。
SさんとAさんは、自分たちの仲が修復できたなら過去を見つめずに、未来を見据えて今後の夫婦生活を送っていただきたいものですね。
とはいえ、私はSさんがコロコロと態度を変えて自分に都合の良い男になびくその神経が許せませんけどね…。
*執筆・取材:アシロ シェア法編集部(シェア法を盛り上げようと日々奮闘中。執筆いただける弁護士先生募集中です。)
*監修弁護士:理崎智英弁護士(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある。)