すぐに仕事を入れられて、すぐにお給料がもらえる日雇い派遣。
急にお金が必要になった時、重宝しますよね。
筆者も学生時代はよく利用していました。
実はこの日雇い派遣に関して、聞いてびっくりした話があるんです。
年収500万円以上ないと日雇い派遣できない!?
私の友人は、旅行に行くための資金を確保するため、日雇いの派遣をしようと思ったとのこと。
そこで、派遣会社の登録会に行った時のやりとりです。
派遣会社:「○○さんの年収はおいくらですか?」
友人 :「(なんで年収聞くのかな…?)だいたい400万円くらいですが…」
派遣会社:「あー…、だとちょっと厳しいですね…」
友人 :「ええっ! なんでですか!?」
派遣会社:「年収500万以上ない方は、日雇い派遣できないことになっていて…」
お金が足りないから日雇い派遣がしたいのにっ!
もっと稼がないと日雇いができないっておかしくない⁉
日本人の平均年収は約420万円といわれているのに!
これは一体どういうことなのでしょうか?
笠原総合法律事務所の生田先生にお伺いしました
Q1
なぜ年収が500万円以上ないと日雇い派遣で働けないのでしょうか?
A1
生田弁護士
日雇い派遣とは、労働契約の期間が30日以内の短期の派遣契約のことです。
2008年に発生したリーマン・ショック以降、日雇い派遣は、派遣会社・派遣先の都合で契約が打ち切られることが多く、雇用の不安定さが大きな問題となりました。
このため、2012年10月に施行された改正労働者派遣法では、日雇派遣が原則禁止になりました(労働者派遣法35条の4)。
ただし例外として、以下の場合には、雇用の不安定さを考慮する必要が一般的に低いと考えられることから、日雇い派遣が認められています(労働者派遣法施行令4条2項)。
質問のように、年収500万円以上の方であれば、雇用の不安定さが問題となることはまずありません。そのため、副業としての日雇い派遣が認められるわけです。
① 60才以上の方
② 雇用保険の適用を受けない学生
③ 年収500万円以上の方で副業として日雇派遣に従事する方
④ 世帯年収の額が500万円以上の主たる生計者以外の方
上記が、副業としての日雇い派遣が認められる条件です。
Q2
では、年収が500万円以下の人が日雇い派遣で働くことはできないのでしょうか?
A2
生田弁護士
日雇い派遣として働くことが一般的になっている業務であって、雇用の安定の観点からも問題が少ないと認められる職種については、例外として日雇い派遣が認められています(労働者派遣法施行令4条1項)。
・ソフトウエア開発
・機械設計
・事務用機器操作
・通訳、翻訳、速記
・秘書
・ファイリング
・調査
・財務処理
・取引文書作成
・デモンストレーション
・添乗
・受付・案内
・研究開発
・事業の実施体制の企画、立案
・書籍等の制作・編集
・広告デザイン
・OAインストラクション
・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
上記の職種では、例外として日雇い派遣が認められています。
生田弁護士より
労働者派遣法は、非正規雇用者が安定的に就労できることを目的として、たびたび改正されてきました。2012年の日雇い派遣の原則禁止もその一環です。
しかしながら、禁止されたのは労働契約の期間が30日以内の日雇派遣の場合だけですので、31日以上であれば働くことが可能です。
また、派遣ではなくアルバイトやパートなどの直接雇用であれば、同条件でも働くことができます。
つまり、非正規雇用者の就労を安定させるためには、労働者派遣法の改正だけでは足りません。労働法制の全体的なバランスが重要といえます。その前提として、景気の浮揚による労働市場の安定が不可欠です。労働法制関係の法案は毎年のように国会で審議されています。このような観点からも、メディアの報道等に注目していただければうれしいです。
*執筆・取材:アシロ シェア法編集部(シェア法を盛り上げようと日々奮闘中。執筆いただける弁護士先生募集中です。)
*監修:生田康介(笠原総合法律事務所 『Warm Heart, Cool Head』をモットーにお客様の正当な利益を実現するよう努力いたします。)