2月12日にAFPBBが伝えたところによると、ロシアのコンピューター・セキュリティー大手カスペルスキー・ラボが、31か国の政府や企業を攻撃してきたマルウェアを発見したそうです。
報道によると、「感染すれば壊滅的な被害を受ける。すべての通信チャンネルが傍受され、最も重要な情報が盗まれる」ほど強力なマルウェアであり、複雑に作られており見つけるのは非常に困難だとのことです。スペイン語話者が制作したと推測されていますが、未だその実態は明らかになっていません。
日本でこのようなマルウェアが作られた場合、日本では不正指令電磁的記録作成罪(いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪、刑法168条の2)が適用されることになります。この罪は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。
■意外と新しい法律
コンピュータ・ウイルスに関する罪が施行されたのは2011年7月と最近のことです。そして、日本で初めてウイルス作成罪が適用されたのは、2012年1月のことで、トラブルになっていた相手を、脅迫的な文言を自身のサイトに書込むように仕組んだ不正プログラムを埋め込んだサイトに誘導し、警察に「脅迫された」などと相談していたという事例のようです。
マルウェア、不正プログラムというと、日本においては「イカタコウイルス」が有名なのではないかと思います。
イカタコウイルスというのは、パソコン内のデータをイカやタコなどの魚介類の画像に変換した上で、そのデータ自体、さらにはパソコン自体を使用不能にさせるマルウェアです。
■以前は器物損壊罪を適用
このマルウェアを作成した人物は有罪判決を受けていますが、ウイルス作成罪が施行される前のことだったため、同罪の適用を受けておらず、器物損壊罪の適用を受けています。
器物損壊罪が適用される理由は、マルウェアによってデータやパソコンを使用できなくなれば、パソコンの効用が害されるということにあります。しかし他方で、ハードディスクが物理的に壊されているわけではないので、器物損壊罪とはいえないのではないか?という疑問も出てきます。また、情報を流出させる形のマルウェアの場合には器物損壊罪に問うことができません。
このような背景事情もあり、ウイルス作成罪が制定・施行されるに至ったというわけです。
■取得・保管・送付も当然罪に
マルウェアを作る能力がなければウィルス作成罪の適用がないということにはなりますが、たとえば嫌がらせの目的でウイルスを取得・保管した場合には不正指令電磁的記録取得・保管罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)となりますし、また嫌がらせの実行としてメール添付で送付したりすれば、不正指令電磁的記録使用罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)となります。
現在は、パソコン、タブレット、スマートフォンのみならず、家電などもインターネットにつながっており、どこから情報が流出するか分からない時代になっています。マルウェアも日進月歩で進化しており、自衛をしていくしかありません。
ウィルス対策ソフトをインストールすることは当然として、不審なファイルは開かないなど、できることから始めてみてはいかがでしょうか。