皆さんは一度の支払いで同じ硬貨を何枚まで使用できるかをご存知でしょうか?
例えば、1,000円の会計時に、100円玉10枚なら特に問題はなさそうですが、1円玉1,000枚での支払いは問題がありそうに感じるのが通常かと思います。
明確な線引きが分からないという方もいらっしゃるかと思いますが、実は具体的に法律で定められているので、解説してみたいと思います。
■一度に同じ硬貨は20枚まで
硬貨の場合は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第7条」によって、同じ硬貨は20枚まで強制通用力を有していると定められています。
つまり、同じ硬貨を20枚以上(正確には21枚以上)使って支払うことは出来ません(強制通用力がないということになります)が、20枚までなら強制通用力があるので、代金の支払いとして有効になります。20枚を超えても、受け取る側が納得していれば、問題はありません。
■紙幣の場合は制限はなし
一方、紙幣(正確には日本銀行券)だと上記のような制限はありません。「日本銀行法第46条第2項」によって、枚数の制限がなく、強制通用力をもっています。100万円の支払いの際に1,000円札1,000枚で支払っても強制通用力がありますので、受取を拒否できません。
紙幣と硬貨にこのような差を設けているのは、紙幣が主たる貨幣であり、硬貨はそれを補助する貨幣だからだと言われています。
強制通用力とは、このように債務の支払いとして有効になるということです。
債務の支払いとして有効だということは、どういうことでしょうか。代表的な債務は代金ですので、代金で説明します。
3,000円の代金を100円硬貨30枚で支払っても、受取を拒否されたら、強制通用力がないので債務の支払いが有効になりません。債務の支払いが有効にならないと、遅延損害金が発生したりして債務者が不利益を被ります。
1,000円札3枚で支払えば、強制通用力があり債務の支払いが有効になりますから、受取を拒否されても、債務者はなんら不利益を被りません。難しい言葉ですが、本旨弁済となる、などと表現されます。
今は、キャッシュレスの時代ですので、あまり問題になることはないですが、豆知識として覚えておくと良いでしょう。
*この記事は2014年8月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
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*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
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