TV番組で犯罪の再現実験を放送…犯罪幇助には当たらない?

皆さんはBPO(放送倫理・番組向上機構)という機関をご存知でしょうか。BPOとは、放送における言論や表現の自由を確保しつつも、視聴者の基本的な人権を確保するために苦情や倫理の問題に対応する機関です。

実際にテレビやラジオなどを視聴した方から意見が寄せられ、放送局が特定できれば、当該放送局に視聴者の意見として通知しています。

今回はその中で、視聴者の意見をピックアップして法的に問題が無いか解説してみたいと思います。

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

 

■ニュース番組で犯罪の再現実験を行っていた

BPOに視視聴者から寄せられた意見の中に、ニュース番組で窓ガラスを破壊する事件があったが、同じ道具を使って再現実験を行って放映をしていたようです。元の意見の原文は下記のとおりです。

日曜のニュース番組で、高校生が高性能ゴムパチンコを使い、バスに向かって玉を放ち、窓ガラスを壊した事件を伝えていた。その際、わざわざ同じ道具を使ってベニア板に穴をあける再現実験を行い「危険ですから真似をしないように」と注意していた。このような危険性のある再現実験は果たして必要であろうか。道具をどのように持ち、どのように玉を飛ばすのかを知らしめるだけの実験である。危険性のある道具の使い方を紹介する必要はない。

BPO 放送倫理・番組向上機構 2016年12月の意見を引用)

 

■実際に犯罪に当たるのか?

たしかに、上記の意見には一理あります。だからといって、危険性のある道具の使い方を紹介すること自体が何らかの犯罪を構成するものではありません。

また、この番組を見た人が、同じような道具を使い、器物損壊などの犯罪を犯した場合、その犯罪の幇助犯となることもありません。幇助犯とは、実行犯の犯行を具体的に援助した場合に成立するもので、抽象的に援助したとしても、成立するものではありません。

例えば、犯罪に使うと知りながら道具を用意するとか、逃亡ルートを教えるなどの行為が幇助犯となりますが、パチンコを売っている店が実行犯と知らずに売ったような場合には、幇助犯とはなりません。

法律的には違法ではないとしても、放送倫理上問題となることはありえます。ただ、倫理というのは非常に微妙なもので、あまり厳しく要求すると放送機関が萎縮することになりますので、そのさじ加減が難しいところです。

放送機関が萎縮すると、つまらない番組ばかりになり、国民の知る権利が侵されることになってしまいます。

今後の推移を見守りたいと思います。

 

*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)

【画像】イメージです

*Hemul / PIXTA(ピクスタ)

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星 正秀 ほしまさひで

星法律事務所

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