離婚する夫婦間に未成年者の子がいる場合、その子の親権者をどちらかに決める必要があります。
お金の問題に次いで揉めるとも言われる親権の問題ですが、裁判所の判断にゆだねる場合、母親に親権が認められる傾向があり、特に、乳幼児については母親に親権が認められる傾向があります。
それは、乳幼児について親権を決める基準の一つとして、「母性優先の原則」というものがあるからです。
●「母性優先の原則」とは?
具体的には、低年齢の子については、一般的に母親に監護させるのがその子の福祉にかなうため、母親に親権を認めるべきというものです(東京高裁昭和56年3月26日判決など)。
その理由は、子が幼いうちは、きめ細やかな育児や家事をする必要があるところ、父親よりも母親のほうがその役割にふさわしいから、というものです。
しかし、本来、子の親権は、子の福祉の観点から、どちらの親が親権者としての適格性を有するのかという観点から実質的に判断されるべきであって、単に母親だからという形式的な理由だけで親権を認めることは妥当ではありません。
●最近の裁判例
最近の裁判例でも、「1歳未満の時期に母親に養育されなかったからといって直ちに発育上重大な影響を及ぼすとは限らないのであって、事件本人を父母いずれの監護養育の下に置くのが相当か(は)、・・・事件本人を取り巻く双方の保護環境等についてのより詳細かつ具体的な資料を収集した上で、実情に即した判断が必要である。」としています(仙台高裁秋田支部平成6年5月17日決定)。
以上のとおり、子の親権をめぐる争いにおいては、裁判所に対して、子を引き取った場合の養育環境等を提示したうえで、子の福祉の観点からは自分こそが親権者に適任だということを具体的にアピールすることが重要です。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)