「土の味がする」と話題になった炭酸飲料「レモンジーナ」。
私も飲んでみたのですが、レモンピールが入ったちょっと苦みのあるレモンジュースという感じで、とてもおいしいと感じました。
そのレモンジーナについて、「レモンジーナ公式」というTwitterアカウントが現れました。しかし、このアカウントは公式を騙っているだけのもので、現在は「レモンジーナbot」と名乗っています。
このような「公式」を名乗ることに違法性はないのでしょうか。
■一般的「なりすまし」と本件の違い
一般的に、「なりすまし」それ自体を直接に違法であるとする法律はないとされ、書込みの内容がなりすまされた人の名誉やプライバシーを害していないと、法的対処が難しいです。
しかし、このアカウントは「公式」を名乗っているので、若干普通の場合とは状況が異なります。
不正競争防止法2条1項1号は、他人の商品などと同一・類似の表示を使用して、他人の商品・営業と混同させる行為を禁じています。
このアカウントは、当初「レモンジーナ公式」と表示しつつ、レモンジーナのペットボトルの写真を用いており、客観的に見て本当に公式のものであると誤解される外観を備えていました。実際に公式のアカウントであると誤解していた方も相当数いたようです。
そのため、今回の件は不正競争防止法に抵触する可能性があるように思います。ちなみに、すでに「公式」は変更していますが、「公式」を名乗っていたことに変わりはないため、違法性はなくなりません。違法性の有無は、原則として、行為時で判断するためです。
■サントリーの通常業務も妨害している
また、レモンジーナを製造・販売しているサントリーには、一部メディア等から問い合わせもあったようですし、同様に一般の方からの問い合わせがあった可能性も大いにあります。
サントリー広報では「弊社の公式アカウントではありません」と否定をしているようです。
このように、「レモンジーナ公式」というアカウントを使うことで、サントリーに本来不要であった対応をさせることになっている、という状況が生じており、この間通常の業務に支障を来しているということができます。
したがって、「レモンジーナ公式」は、偽計業務妨害をしているともいえます。
このように、一般的な「なりすまし」では、書き込んでいる内容が問題とされるのに対して、本件のような「公式」を名乗る「なりすまし」は少々検討のポイントが違ってきます。
「『なりすまし』は内容さえ気をつければ問題ない」と考えている人も、ひょっとしたらいるかもしれませんが、それは誤解です。
いずれにしろ、「なりすまし」は他人に迷惑をかける行為だということを認識して、やめるべきだと思います。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*画像はTwitterユーザー”@mukuou”のスクリーンショットにぼかしをかけたもの