世界中で人気の歌手ジャスティン・ビーバーさんが国際手配されたと報じられました。
アルゼンチンの裁判所が国際刑事警察機構(ICPO)を通じて行ったということですが、国際手配とはどのようなもので、国際刑事警察機構とは何をしている組織なのでしょうか?
今回の報道により注目されている国際手配といものについて紹介します。
■国際手配とは?
一般に国際手配と呼ばれるものは、世界各国の警察機関が加盟して組織した国際刑事警察機構が、加盟国に対し捜査協力、つまり逮捕と引渡しを要請するものがほとんどです。
よく国際手配という名称で呼ばれるため、どこの国にいてもすぐに逮捕される仕組みになっているかのような誤解を与えますが、そうではありません。
まず、国際機関一般にいえることですが、グローバル化が進んだ現代でも、EUなどの特殊な例を除いて、国際機関が特定の国の同意なく、当該国の領域内において、主権を侵害するおそれがある行為(刑事捜査・逮捕行為等)を行うことはできません。
国際手配を要請する国際刑事警察機構も、基本的には加盟国に捜査協力を「要請」するだけで、強制的に命じる権限まではありません。
そもそも、国際刑事警察機構の設立目的は、各国の国内法の範囲内で、すべての刑事警察間における最大限の相互協力を確保し、推進すること(ICPO憲章第2条)にあり、国際手配されても直ちに外国が逮捕してくれるわけではありません。
■国際手配されるどうなる?
国際刑事警察機構では、その設立目的に沿って、捜査協力の一環として、犯罪情報の共有を行っています。
また、加盟国に対し、被疑者の身柄の拘束を求めるたり(赤手配書と呼ばれます。)、被手配者の所在発見、人定事項、犯罪経歴等の情報提供を求めたり(青手配書)、被手配者の犯罪行為に警告を発したりしています。
したがって、国際手配されても、逃亡先の外国ですぐに逮捕されることはありませんが、情報提供を受けた外国当局によって移動の自由を制限される可能性があります。
さらに、滞在先の国内法に違反したことを理由として、逮捕されることもありえます。
そういう意味で、国際手配されても、それだけで逮捕されたりといった不利益が及ぶことはありませんが、犯罪行為に関する情報を国際的に警察当局が共有する結果として、国際法違反で逮捕されやすくなったり、主として移動の制限を受けることが考えられます。
ジャスティン・ビーバーさんの場合も、国際刑事警察機構が自ら外国まで追いかけて逮捕するわけではなく、加盟国の判断で要請に応じて逮捕される可能性があるということになります。
ちなみに、身柄の拘束を求める国際手配(赤手配)は、2013年で約8,800件発せられており、意外と利用されているようです。
*著者:弁護士星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)