翻訳サイトで翻訳した内容が、ネット上で誰でも閲覧できる状態になっており、それが検索エンジンにもヒットする状態になっているということがニュースになっています。
不倫の示談内容のほか、省庁、銀行の機密情報、メール等の内容も含まれていたと報じられています。利用した人はまさか全世界に公開されるなんて思っていなかったでしょう。
サイトを利用し、情報を漏らしてしまった人が悪いのか、それとも翻訳サイト作成者が悪いのでしょうか。このような他人に知られたくない・知られたらマズイ情報を漏洩してしまった場合、誰が悪いということになるのかについて解説します。
■漏洩「した」側との関係で考える
法律関係を考える場合、「誰が権利を侵害したのか」ということを考える必要があります。
公開したのはサイトかもしれませんが、サイトを利用したのは自分ともいえます。このような場合、考えるべきは、利用規約等に公開される旨が規定されているかどうかという点です。
「公開される」ということが書いてあったのであれば、自己責任の度合いが強まりますし、書いていなければサイト側の仕様に問題があったといえます。
報道によると、問題のサイトではその点が明確に書いていたわけではなさそうです。そのため、自己責任の度合いは弱まり、法的にはサイト側に責任追及をしていく余地があると思います。
ただ、海外サイトのようなので、責任追及をしていくことは実際上は困難でしょう。
■漏洩「された」側との関係で考える
しかし、中には自分自身ではなく、依頼をしていた先(たとえば弁護士等の専門家)などが使用した結果、漏洩してしまっているというケースもあるようです。
このような場合、依頼をしていた先に責任追及をすることはできるのでしょうか。
依頼した側から見れば、依頼をしていた先が勝手に翻訳サイトを利用し漏洩させた以上、「漏洩した側」(=サイト側)と一体になっていると見ることができます。そのため、依頼をしていた先に責任追及をする余地があります。
依頼をしていた先もまさか情報が漏洩されることは予想していないはずですが、その点はどのようなサイトであったのかということは確認するべき義務があったのにそれを怠ったと評し得ます。
理論的には、依頼をしていた先は、サイト側に対してさらに責任追及することになるのでしょうが、この点は難しいのではないかというのは上述のとおりです。
便利だからと言って、うかつにネット上のサービスを使うのはやはり怖いということを再認識させてくれる事件ですね。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)