サッポロビールが販売していた「極ZERO」というアルコール飲料について、国税局が「第3のビール」ではなく「発泡酒」だと指摘し、発泡酒だった場合に収めるべき税金115億円を支払ったということが話題になりました。
しかし、それから数ヶ月後、サッポロビール側が「やはり第3のビールだ」という分析結果を公表し、国税局に支払った115億円を返還して欲しいと申請しました。
それでは、なぜサッポロビール側と国税局で種類についてのズレが生じたのでしょうか。
そもそもビールや発泡酒はどのように区分されているのでしょうか。そしてどのような手順で申告が行われ、調査が行われているのかについて解説していきます。
■ビール、発泡酒、第3のビールの区分
酒税法で細かい条件が定められており、複雑ですが、主に麦芽や原料等を基準として区分されています。
ビール: 麦芽比率67%以上
発泡酒: 麦芽比率25%未満
第3のビール:上記以外のもの。麦芽比率50%未満で、スピリッツ入り、豆やとうもろこしを原料に使用
■誰が決めるか
酒税法では製法によって、細かく酒類を分けており、税率も異なります。
そのため、どの酒類に区分されるかで大きく税金が異なり、税金が高ければ商品の値段も高くなり、売上にも直結します。ところが、実際には上記で述べた他にも細かい製法の違いが区分の基準とされており、メーカーと国税庁で判断が異なることもあり得ます。
では、誰が、酒類と税率を決めるかというと、第1段階ではメーカーが自ら判断し税金を申告します。
第2段階で、国税庁がメーカーの申告がおかしいと判断すれば、税金の追加納付を求めることになります。そして、国税庁が課税した税区分に不服であれば、国税不服審判所に不服申し立てをした後、最終的には裁判所で課税の当否を争うことになります。
つまり、税金に関する争いであっても、最終的には裁判所で国税庁の課税処分を争う行政事件として当否が決定されることになります。
■税務署での調査
税務署には、個人事業者に対する調査を担当する個人課税部門、法人に対する課税を担当する法人課税部門、相続税・贈与税等の資産課税部門の他、酒税の調査を担当する酒類指導官がおり、酒税の専門知識がある部門や職員が調査判断にあたっています。
■改正の議論
現行の酒税に関する区分は、大変細かく、かつ、分かりにくい上、少しでも安くそれなりに美味しい商品を作ろうと思うと、税法の枠内の制限された製法を採用するしかありません。
これでは、純粋に美味しい商品を製造するというよりも、酒税法が認める安い税金が適用される制限された製法の中での味の競争となってしまい、酒類メーカーの健全な開発競争・企業努力が報われないという問題もあり、ビール類の酒税統一を含めた再整理が議論されています。
普段から飲んでいるお酒にも多くの決まりごとの中で生み出されているものだと思うと感慨深くなるかもしれませんね。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)