ここ数日、各地で相次ぐ食品への異物混入事件。
食品に虫や発泡スチロール等の異物が混入していたとする写真や動画がSNSで広まり、それ以降、各地で混入騒ぎが相次いでいます。
最近では自らの手でつまようじなどの異物を商品に入れる動画も公開されるなど「自作自演」が波紋を広げています。
では、異物混入の自作自演で写真や動画をインターネットにアップロードしたらどんな犯罪になり、どれだけ大変なことになるかを紹介したいと思います。
●業務妨害罪の成立
自作自演で異物混入の写真や動画をアップロードした場合は、それによって会社や警察・行政に不必要な調査を行わせることが通常想定されるので、業務を妨害するに足りる行為として業務妨害罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立するでしょう。
●信用毀損罪の成立
また、判例では、コンビニエンスストアで買ったオレンジジュースに異物が混入していたとうその申告をしたことにより、コンビニエンスストアに異物が混入されたジュースが販売されていたことが報道された事件において、商品の品質に対する信頼が「信用」に当たり、信用毀損罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立するとしたものがあります。
したがって、自作自演のアップロードは信用毀損罪も成立します(なお、業務妨害罪と両方が成立するかについては議論があります)。
●名誉毀損罪の成立
自作自演のアップロードは、「商品を販売した会社は異物を混入させる品質管理のなっていない会社だ」などとその会社の評価を下げるような事実を世界中にばらまくことになるので、名誉毀損罪(3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金)も成立することになります。
なお、名誉毀損罪の場合は、自作自演でなく本当に異物が混入していた場合にも成立する(一定の条件で処罰されないことにはなりますが)ので注意が必要です。本当に異物が混入していた場合は、証拠になるかもしれないとして画像や写真をアップロードするのではなく、まずは店舗や保健所に連絡しましょう。
●自作自演行為は本当に危険
このように、ただ自作自演のアップロードをしただけで、会社にうその異物混入を告げて何かを要求したり、警察や行政にうその報告をしなかったとしても、上記のような犯罪が成立することになります。
また、逮捕されることがなかった場合でも、自作自演が発覚した場合は自分の信用がガタ落ちになりますし、学生なら停学・退学などの処分や就職活動における大きなマイナス評価、社会人なら懲戒の対象になるでしょう。商品を販売した会社から名誉が毀損された、業務を妨害されたとして損害賠償を請求される可能性もあります。
さらに、2ちゃんねるで実名などを晒されてしまい、半永久的に自作自演をしたという情報がインターネットに残ってしまうこともあります。
自分ではこんな大ごとになるとは思わなかったという言い訳は通じませんので、人生を棒に振りかねない自作自演行為は絶対にやめましょう。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)