「ペヤングからゴキブリ出てきた……」というツイートと共に、投稿した画像がネットで瞬く間に広がり話題となっています。
画像には、麺に絡まったゴキブリと見られる虫の姿があり、製造段階で混入したように見えるものだったのですが、製造元のまるか食品は「通常の製造工程上、このような混入は考えられない」と否定しながらも自主回収を行うということです。
今までも飲食品や店舗などにおいて異物が混入するということはありましたが、その際、どのような行動をとるべきなのでしょうか?今回はTwitterに投稿したことで問題が拡散しましたが、下手にネットに掲載すると逆に自分が訴えられるなどのリスクもあります。
今回は、異物が混入していた場合にとるべき基本的な行動について紹介します。
■行政への連絡
食品衛生法では、腐敗・有害物、病原微生物、健康を損なう異物を含む不衛生食品の販売を禁止しています。
また、添加物や容器包装について一定の衛生基準に適合することを義務付けています。
有害毒物はもっての外ですが、虫の混入も不衛生食品の販売禁止に抵触する可能性がありますので、発見した場合は、メーカーとともに保健所にも連絡してよいでしょう。
■証拠の保存
難しいのは証拠の保存です。
カップ麺などは、包装を開けてみないと中身がわかりませんが、包装を開けた状態で中身に虫が混入していたとしても、製造工程で混入したのか、開封後に消費者が故意に混入したのか、明らかではありません。
メーカーからは、当然「製造工程で混入するはずがなく、自分で入れたに違いない」などと反論することが予想されます。
完璧な証拠保存方法はなく、包装開封後、異物を見つけ次第、そのままの状態で写真を撮影する以外にはないでしょう。
それでも開封後に自分で故意に入れたものではないことの証明はなかなか難しいです。
あとは、いたずら目的ではないことを示すために、保健所にもきちっと連絡したことを記録しておくべきです。
すでに異物を摂取して体調不良となっている場合、自ら体調不良になってまで虚偽の通報をすることは通常ありませんから、残りの食品にも異物が残存していることを写真等で示せれば足りるでしょう。
■損害賠償請求できる内容
食品に混入していた異物や毒物を知らずに摂取し、体調不調となって医療機関で治療を受けた場合は、治療費相当額に加えて、一定の慰謝料も請求できます。
しかし、虫混入などに気付いて食べずに済んだ場合、具体的な被害結果が生じていない以上、どんなに気持ち悪かったとしても慰謝料を損害賠償請求することはできず、せいぜい代替品との交換か、商品代金の返還をメーカー又は販売店に求めることができるだけです。
食品のうち、カップ麺などの加工品は、製造物責任法の適用により、瑕疵(異物混入)と損害(体調不良)の因果関係を立証すれば、賠償が認められる場合があります。
■ブログやSNSに書くのは注意
体調不良の原因や証拠が曖昧なままブログやSNSなどで特定のメーカーの商品に異物があったことを宣伝し、メーカーの売上が激減すると、場合よっては名誉棄損や業務妨害で逆に訴えられることもありますので、軽々にブログで書くのは注意しましょう。
■実際に裁判も
平成12年に和歌山地裁御坊支部で、カップ麺にゴキブリの卵が混入していたのを摂取し、体調不良になったとして、カップ麺製製造業者を訴えた例がありますが、和解で決着しているようです。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)