福岡市の20代の男性が、公立福岡女子大への入学を希望しようと同大学に入学願書を提出したところ、大学側は願書を受理しなかったため、このような大学の対応は不当な性差別にあたり憲法に反するとして、不受理処分の取消などを求めて提訴する予定だという報道がなされました。
女子大に男性は入れないというのは当たり前過ぎて疑問にも思わないかもしれませんが、性差別と言われてみるとそのような気もしてきます。
それでは、憲法では差別についてどう書かれているのか、また今回のケースに置き換えるとどうなるのかを検証してみたいと思います。
●憲法で性別による差別は禁止されている
まず、憲法14条1項は「性別」による差別を禁止しています。
そして、性別による差別が憲法に違反するかどうかは、そのような取扱いの不平等に「社会通念上合理的な根拠」があるかどうか、という点から判断されます。
すなわち、合理的な区別であれば憲法14条1項には違反しないことになり、不合理な区別(差別)であれば憲法14条1項に違反するということになります。
この点、公立の女子大は、過去において、女性が高等教育を受ける機会が極めて制約されていたため、女性にも高等教育を受ける機会を与えようということで設立されました。
すなわち、公立の女子大の設立には、高等教育における男女差別を解消することに目的があったわけです。
●差別にあたる可能性もある
しかしながら、現在では、女性も男性と同程度の高等教育を受ける機会が十分に保障されているといえますので、高等教育における男女差別の解消、という公立の女子大の設立目的はもはや消失したといえるでしょう。
そのため、公立の女子大が男性の入学を認めないことは、合理的な根拠がなく、不合理な男女差別にあたるため、憲法14条1項に違反する可能性があるものと考えます。
今後の裁判の動向に注視していきたいと思います。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)