人間だけではなく、ペットも長寿になり、長い期間ペットとともに生きることができるようになりました。
また、それに伴ってペットの高齢期に対応した介護サービスや心に残る火葬サービス、ペット保険などのサービスが多数登場しています。
しかし、新たなサービスについて、法の規制が及ばないために、トラブルも散見されます。今回は、ペットの後半生で起こりがちなトラブルと対策などについて解説します。
■動物介護施設
衛生・飼育環境の向上により、ペットの寿命は伸長する傾向にあります。人間に例えると100歳超えとなる超高齢犬も珍しくなくなりました。そのため、ペットにも認知症などの病気が増えているようです。
そこで、最近は、自宅での介護が難しい飼主を対象に、動物介護事業を行う業者が増えています。
トラブルが多いのは、契約内容の不履行・解約です。
一般にあまり周知されていないサービス分野であるため、契約書やパンフレットだけで暗に契約すると、説明を受けていた介護環境と違ったということになりやすいです。
1頭あたりの広さや、飼育環境、人員体制・獣医師の巡回体制・食事等を必ず施設見学をして確認しましょう。
解約時には、違約金を取られたり、一括で前払いした頭金・月額費用が戻ってこないケースがあります。
もっとも、不当な違約金条項は、消費者契約法により無効になる可能性もあります。
契約前に必ず現地の居住環境を見学し、違約金等中途解約時の条件を確認しましょう。
■ペットの火葬・埋葬
ペットの葬式に関連して、様々なサービスを提供する事業者が増えています。
全国一律の法規制はないのが現状ですが、中には、契約内容に反して複数のペットをまとめて火葬したりする悪質な業者も存在します。
法規制がない現状でトラブルにあった場合、最終的には民事訴訟を通じて解決する他ありません。
業者との契約内容についての法的な規制がない以上、原則として、業者は自由に料金やサービス内容を設定できます。
他方、比較的新しいサービスであるため、消費者側は比較材料に乏しく、業者が呈示したサービス対価の妥当性の判断が困難です。
サービス内容の質もピンからキリまでありますので、契約前に複数業者から相見積もりを取って参考にするとよいでしょう。
■ペット保険
犬も人と同じように、遊んでいるときにケガをしたり、病気になることがあります。
犬には公的な医療保険がないので、動物病院でかかる治療費は基本的に全額飼主の自己負担となります。
犬種によっては、人間以上に頻繁に動物医療機関にかかることも多く、頻繁に治療が必要な疾病にかかることも珍しくありません。
近年は、ペット保険を取り扱う事業者が増え、加入者も年々増加しています。それに伴って、ペット保険会社とのトラブル増えています。
ペット保険加入に際し、特に注意すべき点は、加入時の告知義務違反と保険金支給の対象とならない免責期間の存在です。
ペット保険も、人間のがん保険などと同様、加入時に告知義務が課せられています。人間の場合、告知するのは自分の病歴であり、比較的告知義務の有無の判断が容易です。
しかし、ペットの場合、当然、飼主がペットの病歴を告知することになるため、自分の体ではなく、しかも、犬の病気をよく理解できていないケースも生じます。
告知義務違反は、故意・重過失でないと認められませんが、それでもペットの病歴と疾病の内容をよく理解していないため、うっかり告知義務に違反したということは十分考えられます。
また、ペット保険では、加入から一定期間に生じた疾病については保険金対象外とする待機期間が定められています。
待機期間中に発病した疾病を待機期間後に受診した場合、保険対象外となりますが、保険会社の事前の説明不足などにより、トラブルとなるケースがあります。
人間の保険以上に分かりにくいので、不明な点があれば納得いくまで保険会社に確認しましょう。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)