最近、高齢者を中心として、いわゆる「送りつけ商法」による被害が増えています。
これは、突然聞いた覚えがない業者から「あなたが買った商品を送るので代金を払ってください」などと電話があり、「買った覚えがない」などと言っても、「忘れているだけだ」などと構わず商品を送りつけ、代引き決済により代金をだまし取ろうという手口です。
特に高齢者が被害に遭っており、特に認知症の方を狙ったケースでは何度も何度も送りつけ、高額な代金をだまし取るなどの被害が増加しています。
今回は、このような「送りつけ商法」に引っかかった場合の対処法についてお話しします。
■商品を受け取ったら代金を支払わなければならないのか。
契約が成立するためには、申込の意思表示とこれに対する承諾の意思表示の双方があることが必要です。業者が商品を送りつけてくるのが、ここでは「買ってください」という申込の意思表示と考えられます。
そして、商品を受け取っただけでは承諾したとはいえません。ですから、受け取っただけでは売買契約は成立せず、代金を支払う義務は発生しません。
ただ、特定商取引法によれば、商品を受け取ってから14日間は業者は返還を求めることができます。そして、14日以内に届いた商品を使用・処分してしまうと、購入の意思があったと考えられ、代金を支払う義務が発生します。本来であれば後に述べるように受け取らないのが望ましいのですが、もし受け取ったとしても、14日間は使用・処分しないようにしてください。
■どのような対処方法が望ましいか。
最も望ましい対処方法は、受け取らないことです。業者によっては、受け取り拒否すると、「なぜ受け取らなかったのか」などと、商品を受け取るよう強要してくる可能性もあります。ですから、あわせて業者の電話番号は着信拒否をすることが望ましいといえます。
また、代金は絶対に払ってはいけません。支払った代金を取り戻すことは、この後お話するように、非常に困難です。
■代金を支払った場合には、どうすればよいか。
代金を支払ってはいけないといっても、高齢者などは自分の記憶に自信がなく、後で裁判などを起こされることを恐れて、支払いをしてしまうことも少なくないいでしょう。代金を取り戻すにはどうすればよいでしょうか。
まず、考えられるのは、弁護士に依頼して代金の返還を請求してもらうという方法です。
しかし、このような悪徳業者の住所は実体がないものであることが多く、電話番号もすぐに使用しなくなってしまうことが多いのが事実です。弁護士を間に入れても、連絡すら取れなくなっており、請求すらできないことが多いといわざるを得ません。
また、業者の金融機関口座が取引できないようにして(口座凍結)、その口座に入っているお金の中から返還を受けるという方法があります。
弁護士を経由してこの方法を採ることも可能ですし、警察も被害届を受理すればこの方法をとってくれる場合があります。しかし、多くの場合、口座凍結をした時点では、口座の中からお金が抜かれており、やはり取り戻すことは困難なのが実情です。
支払いをした場合には、速やかに弁護士や警察に相談するべきですが、お金は諦めなければならないことが多いのが現実です。
*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)