覚せい剤取締法違反などの罪に問われたASKA被告に対して検察が懲役3年を求刑しました。
その中でASKA被告は愛人について「大事な存在」と語ったようですが、この発言が波紋を広げています。
通常の場合「家族と共に依存症を克服します。」などと発言し、裁判官などへの心証をよくするため、「愛人が大事な存在」という発言は普通しません。この発言は量刑にどう響くのでしょうか。また、この発言をした理由はなぜだったのかを予想してみます。
■刑の重さはどうやって決める?
刑事裁判のほぼ100%が有罪となります。それは検察官が有罪にならないとほんの少しでも危惧すると起訴しないからです。
従って、刑事裁判の関心は、有罪か無罪かではなく有罪の場合の量刑がどの程度になるのか、になります。
ですので、弁護人はなるべく量刑を低くしようと事前に準備し、法廷でもそのような弁護活動をします。
裁判官は、検察官が提出する証拠や弁護人が提出する証拠及び法廷での証人尋問、被告人質問を通じて、心証を形成し、過去の事例なども踏まえ、量刑判断をします。
報じられた情報によると、被告人質問で被告人が「愛人が大切だ」と供述したことが量刑に不利になると説明しています。妻のいる男性が愛人が大切だと述べることは、量刑に不利に作用すると一般論としては言えます。
裁判官は、社会通念に従って心証を形成しますから、社会通念上、妻がいる男性が愛人が大切だと発言することは問題視されるからです。
しかし、量刑は被告人質問だけで決まるわけではありません。刑事裁判には膨大は書証(証拠書類)が提出されます。書証の要旨は公判で述べられますが、あくまでも要旨ですので、公判を傍聴しただけでは量刑を具体的に予測することは出来ません。記事のコメンテーターは書証を見ているわけではありませんので、正確な判断をしているとは言えません。
■マイナスになるかもしれない発言をなぜしたのか
ここから先は推測ですが、この事件の弁護人は事前に書証を精査し、執行猶予が額実だと判断したので、被告人質問で被告人に自由に述べさせたのかも知れません。そうだとすれば執行猶予が付くと思います。
いずれにしろ、判決(9月12日)が言い渡されれば、量刑は判明します。判決の言渡と量刑理由に注目したいと思います。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)