夏の行楽シーズン真っ只中ですが、みなさんの中には、これから海外旅行に行くという方もいらっしゃると思います。中には、日本で食べ慣れたものを持参していきたいという方もいることでしょう。
そこで、今回は、日本を出発する際に、国際線に持ち込むことができないものや、持ち込み禁止物を機内に持ち込んだ場合の罰則についてお話します。
■国際線に持ち込みが禁止されるもの
航空法86条2項は、「爆発性又は易撚性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれのある物件で国土交通省令で定めるもの」は、航空機内に持ち込んではいけないと定め、これを受けて、施行規則194条1項は持ち込み禁止となる物質を挙げています。火薬類や引火性物質、放射性物質、凶器等の危険物質は、これらの法令によって機内持ち込みが禁止されています(当然輸送自体も禁止されています)。
違反者に対しては、50万円以下の罰金が課される可能性があります(航空法150条)
これとは別に、平成18年8月に判明した英国での航空機爆破テロ未遂事件を受け、保安対策の一環として、国際民間航空機関(ICAO)が示したガイドラインに沿って、国際線の客室内への液体物の持ち込みが制限されることとなりました。
具体的な制限の代表例については、国土交通省の航空局安全部空港安全・保安対策課航空保安対策室で作成される「量的制限の対象となる液体物のリスト」において示されています。
■持ち込みが制限される「液体」とは?
「量的制限の対象となる液体物のリスト」では、「液体物」の中には、「液体」に加えて、「ジェル類」「エアゾール(煙霧質)」、容器に入れないと形状が保てない「半液体状物」も含まれる旨が記載されています。
このリストは、実際の運用に基づいて更新されており、現在公表されている最新のものは、平成25年3月29日現在のものです。
これによると、代表的なものとしては、果汁100パーセント飲料、ネクターなどの果汁飲料、コーラやコーヒーなどの清涼飲料、牛乳、豆乳などの乳飲料、アルコール飲料はもちろんのこと、マヨネーズ、練からしなどの調味料や、ジャム、マーマレードなどのスプレッド類、マーガリン、生クリーム、サワークリームなどの乳製品が挙げられています。
ここまでであれば、まだ、理解できますが、塩辛、しば漬け、甘露煮、キムチ、酢漬け梅干(干し梅やかりかり梅などは除くとのことです)など、一見、ジェル類にも半液体状物にも該当しないように思われる食品類も規制対象とされています。
食品類以外では、防水スプレーや静電気防止スプレーなどのガスボンベ式スプレー、軟膏、保湿クリームなどのクリーム、ローション類、香水などが制限されています。
ただ、今挙げたもののうち、ガスボンベ式スプレー以外は、100ml以下でリスト指定の方法で梱包されている場合には、持ち込みが可能とされているようです。
量的制限対象品の具体的な判断は、最終的には、保安検査場の検査員が行うこととなっています。また、検疫などの観点から別途海外への持ち出しが禁止される物もあるので、この点は注意が必要です。
*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)