政府は、前任者の定年退官に伴い、次期大阪高裁長官に大谷直人最高裁事務総長を任命することを決めました。
これを受けて最高裁は、大谷氏を大阪高裁長官に充てる人事を決めました。
今回は、最高裁の構成や役職についてご説明したいと思います。
最高裁の構成は、大きく「裁判部門」と「司法行政部門」に分かれています。
■裁判部門とは?
上告事件などについて、審理・裁判する部門です。
憲法上、最高裁は、一切の法律、命令、規則や処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限(違憲立法審査権)を有しています(憲法81条)。
国会が国民の人権を侵害する法律や規則を制定したり、政府が国民の人権を侵害するような処分をした場合、最高裁が「憲法の番人」となって、国会や政府による人権侵害から国民を守る役目を担っています。
最高裁判事は、合計15人で、そのうちの1人が最高裁長官に任命されます。
現在の最高裁判事は、裁判官出身が6名、検察官出身が2名、弁護士出身が4名、官僚出身が2名、学者(大学教授)出身が1名となっています。
なお、最高裁長官には、主に裁判官出身者が任命されており、現在のところ10人連続で裁判官出身者となっています(その前は検察官出身者)。
最高裁には、15人全員の裁判官で構成される大法廷と、5人ずつの裁判官で構成される合計3つの小法廷があります。
このうち全員の裁判官で構成される大法廷は、重要な事項について判断する場合に開かれます。
具体的には、ある法律が違憲だと判断したり、以前の最高裁判例を変更するような場合に開かれます。
■司法行政部門とは?
最高裁は、裁判だけをしているわけではありません。
憲法上、最高裁には、規則制定権と司法行政権が与えられています(憲法77条1項)。
規則制定権とは、裁判の手続に関する規則(民事訴訟規則、刑事訴訟規則等)を定めたりする権利です。
司法行政権とは、全国の下級裁判所の裁判官の人事、裁判所の庁舎の管理、予算をどのように使うかといったことを決める権利です。
これらの権限は、最高裁の裁判官によって構成される裁判官会議の議決に基づいて行使されます。
そして、裁判官会議を補佐する機関として、事務総局が置かれています。
この事務総局のトップが、大谷氏が就任している最高裁事務総長です。
事務総局には、秘書課、広報課、情報政策課、総務局、人事局、経理局、民事局、刑事局、行政局、家庭局が設置され、裁判官が各ポストに配置されています。
また、司法行政部門には、司法修習生の研修を行う司法研修所、裁判所書記官等の研修を行う裁判所職員総合研修所、最高裁判所図書館が置かれています。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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