6月25日にKDDIが「通話定額プラン」を発表し、既に発表しているNTTドコモやソフトバンクモバイルと同じ、月額2,700円となりました。
ここで気になるのは全社2,700円で統一しているけど、これってカルテルじゃないの?という疑問…。
そこで、改めてカルテルについてのおさらいと、今回のケースについて検証してみたいと思います。
■カルテルとは
独占禁止法は、自由公正な競争をゆがめ、消費者利益を阻害するおそれが大きい「不当な取引制限」として、カルテルを禁止しています。
カルテルとは、事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決め、競争を制限する行為とされています(公正取引委員会ガイドライン参照)。
協定は、紳士協定や口頭の約束でも足ります。協定の形式にかかわらず、事業者間で何らかの合意があり、結果的にそれぞれが同一の行動をとればカルテルとして規制対象となります。
■携帯代金の横並び
では、携帯代金の横並びはカルテルではないのでしょうか?
もちろん、大手3社が裏で合意しているという証拠が出てくれば、当然、独占禁止法違反のカルテルとして、取り締まり対象になると考えられます。
しかし、実際には、公正取引委員会に目をつけられているという話は聞き及びません。
これは、結局のところ、3社は、「合意」のもとに価格を横並びにしているのではなく、自由公正な競争の結果として、料金が横並びになっているにすぎない、と考えられているからでしょう。
今回の定額制の導入も、ソフトバンクが先行し、ドコモとKDDIが後追いしましたが、他社との料金競争に負けて顧客が逃げないようにするための正当な企業努力として評価されるため、カルテルには該当しないと考えられます。
携帯電話の料金以外にも、例えば牛丼の並盛も各社がほぼ同じ価格設定で上下を繰り返していますよね。
これも、合意のもとに同じ価格としているのではなく、他社との値下げ競争の結果、ほぼ同じ値段設定となっていると考えられるために、カルテルには該当しないでしょう。
■カルテルの罰則
独占禁止法違反のカルテルと認定されると、カルテルを解消する排除措置命令や課徴金納付を命じられることがあります。
排除措置命令に従わないとさらに刑事罰の対象とされます。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)