「職務質問は任意だから拒否できる」「逃げたら警察は手出しできない」など、職務質問についての話はネット上などで度々見かけます。
本当に拒否できるのか、拒否したらどうなるのかなど、弁護士視線で実際はどうなのかを解説してみたいと思います。
■事実上拒否は困難
職務質問は、法律の建前としては「任意」のものであり、強制捜査ではないため、拒否できることになっていますが、判例が職務質問の際の有形力行使を広く許容しているため、事実上職務質問を振り切って逃走?することは困難です。
■職務質問の根拠
警察官職務執行法第2条には、こう書いてあります。
「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。」
これが職務質問の法的根拠です。
ただ、刑事訴訟法は、捜査機関の行う捜索・差押などの強制捜査について、原則として裁判官の発する令状がないとしてはならないこととしています(令状主義)ので、令状なしで可能な職務質問は、あくまで「任意処分」とされています。
■任意なのに拒否できない理由
「任意処分」なら、当然拒否できそうなものですが、実際には職務質問のターゲットにされると逃げてもしつこく追いかけてきますし、拒否しようとすればするほど解放してくれません。
その理由は、判例が、職務質問の際、容疑の蓋然性、職務質問の必要性、手段の相当性を総合的にみて、強制に至らない程度の有形力を行使すること(要するに実力行使)を適法と判断しているためです。
つまり、逃げようとする姿勢も含め、犯罪の嫌疑が高く、職務質問をする必要性が高い場合には、無理やり拘束するなどしない限り、対象者の肩を掴んで逃走を防いだり、逃げるのを追いかけて説得する行為は、職務質問として適法であるということです。
■自転車無灯火運転
夜に都内を自転車無灯火で走っていたり、防犯登録のない自転車に乗っているとかなり高い確率で職務質問に遭います。
この場合も、盗難自転車である蓋然性があり、盗難の有無を調べる必要が高いため、急いでいてもほぼ無理やり止めて職務質問ができるわけです。
もちろん、その場から立ち去るのを、強制的に止めて拘束することはできませんが、肩に手をかけたり、自転車のハンドルを軽く押しとどめて職務質問に応じるよう説得するくらいのことは、判例の許容する有形力の行使として適法とされる可能性が高いでしょう。
■拒否する方法
判例が職務質問の際の有形力行使を広く認めているのは、職務質問が犯罪検挙の端緒となることが多く、「放してください」と言われたら警察官が説得も何もできないようでは治安が保てないという実際上の不都合が理由です。
とはいえ、あくまで任意処分である以上、立ち去るのを強制的に止められることはないので、警察官に有形力を行使されつつ、あるいは追いかけられつつ、自宅に入ってしまえば、家の中にまでは職務質問で入って来られませんので、拒否は可能でしょう。
ただし、警察官の説得は延々と続きますし、立ち去ってもついてきますので、やましいことがないのであれば(あっても)、素直に応じた方が早く解放されることは間違いありません。
ちなみに当職は、大学時代TOEICの受験会場に自転車でいく途中で職務質問に遭い、試験時間に遅刻する憂き目に遭いました。
■警察とのトラブルについて分からないことは無料法律相談Q&Aで弁護士に質問しよう
今回は警察からの職務質問の対応について説明してきました。
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*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)
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