ロシアで「飼い猫」と偽り電車内にライオンの子どもを持ち込んだ人がいたと話題になりました。
さすがロシア、という感じのニュースですが、もし日本で電車内にライオンを持ち込んだら法律上問題はあるのでしょうか?
■威力業務妨害
ライオンが電車内で暴れたり、他の乗客がパニックとなり、電車の運行が妨げられれば、威力業務妨害罪が成立し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
威力業務妨害罪が成立するには過失だけではなく、故意が必要ですが、ライオンが暴れたり、乗客がパニックになることは事前に十分予想でき、かつそれでもよいと思って電車に乗るはずですので、未必の故意があったものとされる可能性が高いでしょう。
■詐欺罪
意外に思われるかもしれませんが、ライオンであることを隠して乗車すると、鉄道会社に対する詐欺罪(利得詐欺)が成立します。
というのも、鉄道会社では、ナイフや爆発物等の危険物の持ち込みを禁止していることがほとんどです。この危険物の持ち込み制限は、爆発物に関しては法令で禁止され、その他の危険物は鉄道会社の自主規制にすぎません。
しかし、少なくとも、鉄道会社は、他の乗客危害を及ぼすおそれがあり、連射運行に支障が生じる危険物を持ち込んでの乗車を拒否する意図であることは明白です。
そのため、鉄道会社はライオンだと知っていたら乗車を拒否したのに、猫であると偽装して乗車する行為は、それ自体、鉄道会社から乗車という利得を詐欺によって得たことになるのです。
よく暴力団員がゴルフ場を利用して詐欺罪で逮捕されるのと一緒です。
■他の乗客に噛みついたら?
はじめからライオンを使って人を殺したり、傷つけようとしていた場合以外は、殺人や傷害の故意はありませんので、過失傷害罪や過失致死罪が適用されます。
■ライオン以外の危険動物
日本でライオンの持ち込みはあまり考えられませんが、実際に大型のヘビが新幹線に潜んでいたということはありました。
安全確認等で運行に支障を生じさせる動物であれば、ライオンでなくとも上記の犯罪が成立する可能性があります。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)