アルバイトでも年次有給休暇!知らないと損する法知識

意外と知らない労働関係の法知識をお伝えします。

年次有給休暇って正社員じゃないと貰えないのではないか、と思っている方、意外と多いのではないでしょうか。実はアルバイトやパートでも年次有給休暇は貰えるのです。

今回は、年次有給休暇とは何か、アルバイトやパートの年次有給休暇の取得日数や、その賢い使い方についてお伝えしたいと思います。

アルバイト

■年次有給休暇とは

年次有給休暇(以下「年休」という)とは、労働者が賃金の支払いを受けながら休暇をとることができる制度です。

労働基準法上、労働者は「6ヶ月間継続勤務」し「全労働日の8割以上出勤」すると、年休権を取得できます。

年休の取得日数については、労働基準法上、通常の労働者の場合、採用後6ヶ月の継続勤務を終えた時点で10日が付与されます。その後、継続勤務1年ごとに、当初の6ヶ月以降の継続勤務2年目までは1労働日ずつ、3年目以降は2労働日ずつが加算され、取得日数の上限(6年6ヶ月以上勤務)は1年間で20日です。なお、就業規則などで労働基準法の水準を超える年休を付与することが定められている場合は、それに従います。

■アルバイトやパートの年休の取得日数

アルバイトやパートでは年休を貰えない、と思っている方も多いと思います。しかし、アルバイトやパートでも年休は貰えるのです。もっとも、付与される年休日数が通常の正社員と異なることがあります。

具体的には、(1-1)週の所定労働日数が4日以下の労働者あるいは(1-2)週以外の期間で所定労働日数が定められている場合には1年間の所定労働日数が216日以下の労働者で、かつ、(2)週の所定労働時間が30時間未満の労働者は、通常の労働者との比較で所定労働日数に比例した日数の年休が付与されます。

つまり、アルバイトやパートでも年休が貰えないというわけではなく、通常の労働者に比して少ない日数の年休は取得することができるのです。

このことは、すなわち、アルバイトやパート労働者として就業していたとしても、週の所定労働日数が5日以上であれば、たとえ1日2時間しか勤務していないとしても、通常の労働者と同様の日数の年休を付与しなければならないことを意味します。同様に、週の所定労働時間が30時間以上のアルバイトやパート労働者であれば、たとえ所定労働日数が週4日であったとしても、通常の労働者と同様の日数の年休を付与しなければならないのです。

以上のように、アルバイトやパート労働者と一言で言っても、その具体的な勤務形態をみない限りは年休の付与日数を判断することはできず、アルバイトやパート労働者でも正社員と同様の年休日数が付与されることもあるのです。

■年休の賢い使い方

取得した年休権を労働者が実際に使用するためには、休暇時季を指定する必要があります(「時季指定権」といいます)。

なお、労働基準法上、使用者は、請求された時季に年休を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に年休を与えることができるとされています(「時季変更権」といいます)。

では、労働者は時季指定権をどのように行使すべきでしょうか。

まず、時季指定権は年休取得の日より前に行使すべきです。事後請求は、使用者が任意に応ずる場合や、就業規則等により許容されている場合を除けば、原則として適法な時季指定とは認められないからです。

次に、指定した年休が長期にわたる場合、労働者は事前の調整を要求され、それを経ない場合は使用者の時季変更の裁量の余地が大きくなるとされています。判例でも、通信社の記者による連続24日間の時季指定のうち、後半の10日間について使用者の時季変更権行使が有効とされた例があります。したがって、あまりに長期の年休は取得できない可能性が高いといえます。

■結語

このように時季指定権行使には、一定程度の制約があります。しかし、これまで述べてきたようにアルバイトやパート労働者でも前述した一定の要件を充足すれば年休は付与されるのですから、年休を有効に活用することにより、心身のリフレッシュをはかり、また、自己啓発の機会をもっていただければと思います。

鈴木 翔太 すずきしょうた

弁護士法人 鈴木総合法律事務所

東京都渋谷区恵比寿1-8-6 共同ビル4階・7階

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