千葉県の流山市役所が、同地域をロケ地として活用した映画が5月に公開されるのにあわせ、届出者の「恋をしている」という思いを受け付けています。
恋届には、届け出る本人と恋人もしくは恋人にしたい人の氏名、出会いの場所、2人で訪れたい場所、相手に伝えたいことなどの項目を入力するそうです。
非常にほんわかする話題ではありますが、もしこの届けを出したあとにカップルの一方が関係を解消したくなった際、その相手は恋届という証拠をもってそれに反対し、何らかの法的手段をとることが可能になるでしょうか?
本来、恋愛を応援することが目的のこの恋届、違った意図で使われてしまうことがないのか、検証してみたいと思います。
仮に「恋届」が「婚姻届」のように法律上意味のあるものであるとすれば、届出後にカップルの一方が関係を解消したくなったとしても、届出がいったん受理された以上は、相手は恋届をもってそれに反対することができそうです。しかし、「恋届」はそもそも法律上意味のあるものなのでしょうか?
■契約の拘束力
「契約」とは、2人以上の人によって交わされる約束のうち、法律的な権利義務を伴うものです。「契約」と「単なる約束」は法律上の強制力があるかないかで区別されます。
「単なる約束」の場合は、相手が約束を守らなかったとしても、強制することはできません。これに対して、「契約」の場合は、相手がその内容を守らなかった場合には、法律上の強制力をもってその内容の実現を強制することができます。
このように「契約」と「単なる約束」が区別されているのは、裁判所がその内容を強制的に実現するのに相応しいか違いがあるからです。つまり、国家が時間と費用を使ってまでその内容の実現に協力すべき問題なのか否か、という違いがあるのです。
■恋愛は自由
恋愛は、法律に縛られず「自由」というのが原則です。恋人同士の痴話喧嘩は裁判所が介入するのに相応しい問題とはいえませんし、裁判所は、「恋人関係を続けろ」という判決を下すこともできません。
したがって、恋愛契約(?)は、単なる約束であって契約ではありませんので、相手がその内容を守らなかった場合には、法律上の強制力をもってその内容の実現を強制することができません。後からカップルの一方が恋愛関係を解消しても、(婚約や内縁関係にある場合は別として)法的には問題はないことになります。
■「恋届」の使い途
「恋届」は届出人が一人で作成するので、「2人以上の人によって交わされる約束」とはいえないため、そもそも契約とはいえません。しがたって、この届けを出したあとにカップルの一方が関係を解消したくなった場合、その相手は「恋届」という証拠をもってそれに反対し、法的手段をとることはできないということになります。
もちろん、人間には感情があり、法的には問題がなくても道義的な問題が生じることもありますので、やはり相手へのマナーは必須です。マナーをしっかり守って、恋愛を楽しみましょう!