お買い物に便利なクレジットカード。
お財布に現金が入っていなくても買い物ができるし、ネットショッピングにも使えるから便利ですよね。
でも、ちょっと心配になるのがクレジットカードの不正利用。
スキミングやフィッシングなどでカード情報を盗まれてしまい、身に覚えのない代金を請求されてしまうと「不正利用された!」と警察にかけ込みたくなるでしょう。
じつはこのケース、カード名義人であるあなたが警察にかけ込んでも、被害届は受理してもらえません。
「そんなバカな?」と思うはずですが、本当です。
今回は、クレジットカードの不正利用で名義人が被害届を提出できない理由を「元刑事ライター」の鷹橋さんに聞いてみました。
この記事の監修者
振り込め詐欺や銀行員の巨額横領事件などの捜査を担当してきた元知能犯刑事。警察署勤務時代は幅広い事件を担当。 |
不正利用の被害者はだれになる?
クレジットカードの不正利用は、刑法に定められた「詐欺罪」にあたります。
名義人だと偽って商品をだまし取っているのですから当然ですね。
通常の詐欺事件では「だまされた人」と「だまし取られた人」は同じ人になるのが基本です。
ところが、クレジットカードの不正利用では、まず店舗の店員がだまされることになります。
しかし、決済された代金はカード会社が店舗に支払う仕組みになっているので、代金分をだまし取られたのはカード会社です。
つまり、「不正利用の被害者はカード会社だ」という理屈になります。
名義人は被害届を提出する必要なし!
不正利用が発覚するのは、名義人に対して請求が発生したときです。
「こんな買い物した覚えはないけど…」と不審に感じ、カード会社に問い合わせて発覚するわけですが、ここまでの流れで名義人は登場していませんよね?
だまされたわけでも、だまし取られたわけでもありません。
つまり、名義人は「不正利用分を請求されただけ」の存在です。
詐欺の被害は受けていないので、名義人は警察に被害届を提出できません。
クレジットカードの不正利用に遭った場合、名義人はカード会社に「この買い物は不正利用だ」と伝えて調査を依頼するだけでOKです。
あとはカード会社が買い物の内容、利用された店舗、配送先などを調べて、不正利用であることが確認できれば請求内容が訂正されます。
被害者はカード会社、でも実損を受けるのは…
クレジットカードの不正利用で被害者になるのはカード会社です。
ところが、カード会社は警察に被害届を提出しません。
ふしぎですよね?
カード会社は決済を許した店舗に対して代金の返還を求めるので、実損は発生しません。
「ウチは損をしていないし、どうでもいいよ」という理屈です。
最終的に泣きを見るのは店舗ですが、店舗は法律上の被害者にならないので被害届を出せません(※)。
警察も、被害者から被害届が出ないので積極的に捜査はしない、という構図ができあがっています。
悪質な不正利用事件があまり表ざたにならないのは、こんな理屈があるからなんですね。
※過去の裁判では店舗側を被害者と扱っている例もあるので、