結婚式は新郎新婦にとっては晴れの舞台で、人生の一大イベントですが、参加する側としては憂鬱なこともあります。とくに会社関係や、あまり親交が深くないケースでは、高くないご祝儀を出すうえ、貴重な時間も削られてしまうため、「出たくないな」と思ってしまいます。
結婚式にありえない「参加条件」が
そんな他人の結婚式に憤りを感じているのが20代女性の馬場さん(仮名)です。参加予定だった結婚式が色々とひどいそう。話を聞いてみると、以下のような「条件」が招待状に記載されていました。
・ご祝儀5万円以下はお断り
・式に統一感を出したいため、女性は赤のドレス、男性は黒のタキシードを着てきてほしい
・こちらは引き出物を出す。結婚式費用で財政が苦しいので何らかの家電製品を持参してほしい
・多くの人に来てもらいたいので絶対に欠席しないでほしい
どれもが非常識と言わざるを得ない記載内容。馬場さんは何人かにこの件について相談しますが、ほぼ全ての人が「酷すぎる」「こんな招待されたら俺は行かない」「何様のつもりなんだ」「親は何をしているんだ」と怒りの声を上げます。
そのなかで法律に詳しいという友人は「結婚式とはいえ、お金や家電製品を半ば強制的に要求することは恐喝にあたるんじゃないの?」と話したそうで、馬場さんも「そうかもしれない」と感じています。
結婚式でご祝儀の下限を決めたうえ、家電製品をも迫る行為。違法性は果たしてあるのでしょうか? 高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
脅迫罪になるのか?
理崎弁護士:「結婚式や披露宴にどのような客を呼ぶのかについては、結婚式・披露宴の主催者である新郎新婦にあります。また、新郎新婦が、結婚式等に招待客が参加するための条件についても自由に決めることができます
招待された客としても、招待状を受け取ったからといって必ずしも結婚式に出席しなければならない義務があるわけではありません。新郎新婦側が提示した条件に不満がある場合には、結婚式等に参加しなければ良いだけです。
上記のとおり、新郎新婦がご祝儀の金額に下限を設けることや決められたご祝儀を支払わなければ結婚式には参加させないという措置をすることは法律的には何ら問題はありません。
また、脅迫など刑事上の責任が発生することもありません」
道徳的には「けしからん」といわれても仕方ない結婚式ですが、拒否する選択権が与えられている以上、脅迫罪などには当たらないようです。馬場さんの友人は、ちょっと勘違いしていたのかもしれませんね。
ちなみに馬場さんは、怖いもの見たさでこの結婚式に出るそうです。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)