9月18日、兵庫県明石市が離婚後養育費の支払いが確定したにもかかわらず、不払いを続ける人間について、公式サイト上で氏名を公表する条例の導入を制定することを検討していることが明らかになりました。
氏名公表については、やむを得ない事情の場合は見送られるとのことですが、明石市は現在養育費を受け取ることができていないひとり親家庭に上限5万円を立て替える制度を導入しており、より養育費をしっかり受け取ることができるシステムを構築しようと考えているようです。
不払いは泣き寝入りするしかない?
この問題の根底には、養育費の支払いが確定したにもかかわらず、踏み倒すなどして逃げてしまうケースが多く、ひとり親家庭が困っているという現実があります。たとえ裁判で支払いを命じられたとしても、相手が逃げてしまえば、泣き寝入りするしかないというのです。
高島総合法律事務所の理崎智英弁護士は現状をこう話します。
理崎弁護士:「養育費が支払われない場合、強制執行という裁判上の手続で、相手の財産を差し押さえることによって養育費の回収を図ることになります。
強制執行の対象となる財産は、主に不動産、預貯金、有価証券、給与等です。対象となる財産は、権利者(養育費を受け取る人)で特定する必要があります。
そのため、相手がどのような財産をもっているかが分からず、相手の勤務先も不明ということですと、強制執行をすることが出来ませんので、そのような場合、最終的には泣き寝入りするしかない、ということになります。
もっとも、民事執行法が改正されたことにより、今後は、裁判所を通じて、市町村や年金事務所に相手の勤務先の情報等を提供してもったり、金融機関に相手の口座の情報を提供してもらったりすることが出来るようになるので、養育費の回収可能性は高くなるものと考えます」
やはり行方をくらましてしまうなどした場合は、泣き寝入りするしかないようです。
明石市の条例に有効性はある?
明石市が検討している、養育費不払いを防止するための条例。導入された場合、有効性はあるのでしょうか。高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
理崎弁護士:「有効だと思います。養育費を支払わない人というレッテルを貼られ、その事実は全国に広まってしまいます。そのような事態を避けるため、養育費を支払う人は多いと思います」
やはり名前の公表は、弁護士の目から見ても一定の効果があると映っているようです。
プライバシーに問題は?
有効性の認められた条例ですが、一方で名前を公表された人のプライバシーを心配する声があります。個人情報を公表することに、問題はないのでしょうか? 高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
理崎弁護士:「養育費を支払わない人という不名誉な情報が全国に広められてしまうので、対象者の名誉やプライバシーの観点から問題があると思います。
また、裁判所という司法を通じず、一行政機関である明石市がそのような措置をとることにも問題があるように思います」
今後に注目
個人情報をどう守るかなど、課題や問題も多い条例案ですが、養育費不払いに一定の効果が見込めることは間違いないようです。今後この条例案がどうなるのか、注目ですね。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)