育休中に妊娠し産休取得は非常識?弁護士に聞いてみた

昨今大手企業では産休や育休が浸透し、子を持つ女性が働きやすい社会になりつつあるといわれています。しかし、実際に社会に出ている女性からは、「制度が進んでも周りの意識が追いついていない」という声もある様子。

産休を取ることについて「迷惑」と感じているような言動をぶつける人間もいるようで、働く女性に対する意識が低い会社も残念ながら存在しています。

 

育休中に妊娠し産休の取得を検討

都内の会社に勤めるIさんも、「産休の意識が低い社員」に悩んでいると言います。彼女は育休中にまた子供を授かり、産休の取得を検討しているのですが、それを同僚に相談すると「えーまた休むの? 絶対良い顔をされないと思う」と言われてしまいます。

「退職するしかないのか…」と考え込んでいるIさん。育休中に産休を取得することはできないのでしょうか? 琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。

 

育休中の産休申請は認められるのか?

川浪弁護士:「産休(産前休業と産後休業)とは、労働基準法65条に定められている出産予定の女性に対して与えられる休業をいいます。同条によれば、出産予定日から6週間以内の女性が産休を請求した場合には休ませなければならず、出産後8週間は(請求の有無にかかわらず)原則として休ませなければなりません(産後6週間経過後に女性が請求して医師が認めた場合には、例外的に6週間経過後から就業できます)。

条文上、2人目の子供の出産について産休がとれない(続けて産休をとることはできない)という制限はありませんので、会社(使用者)が産休取得を拒否することはできず、辞めさせることもできません」

 

拒否や退職勧奨はマタハラになる

川浪弁護士:「そもそも、産前産後休業の期間及びその後30日間の解雇は、労働基準法19条で明確に禁止されていますし、産休を複数回取得したことを理由に女性を辞めさせた場合には、男女雇用機会均等法9条に違反します。

また、会社は、妊娠・出産等をした女性従業員の就業環境を害さないように、女性従業員からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(男女雇用機会均等法11条の2)。

このように、法律は、女性の出産・妊娠について厚く保護しており、それに反するような言動は厳に慎むべきです。妊娠・出産、産前産後休業、育児休業等を理由として会社が不利益な取扱いをすること、妊娠・出産、産前産後休業、育児休業等に関して女性が不快に思う言動を上司や同僚が投げかけることは、マタニティハラスメント(マタハラ)に該当します。

その程度や内容によっては、違法な行為と認定されて損害賠償責任が発生することもあることを会社は念頭に置くべきでしょう」

 

躊躇せず申請を

子供は国の未来を作る存在。それを育てる働くお母さんも、保護されるべきでしょう。躊躇せず、休暇を申請するべきですね。

 

*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

川浪 芳聖 かわなみよしのり

琥珀法律事務所

東京都渋谷区恵比寿1-22-20 恵比寿幸和ビル8階

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