2019年は天皇陛下(現・上皇陛下)譲位の影響で、4月末から5月6日にかけ、暦は10連休となりました。長期連休となれば、海外や国内など、旅行に出かける人が多くなります。
今年も空港や新幹線駅は大混雑。ラッシュ時にはすべての便がほぼ満席となり、予約に一苦労した人もいたのではないでしょうか。
海外旅行にでかけたUさん
10連休、東京からフランスに旅行したUさん。居心地が良かったそうで、連休を満喫したそうです。ギリギリまで過ごし、連休最終日に帰国できる飛行機に乗ろうとしたところ、「トラブルで飛行機が飛ばない」と告げられていまいます。
連休明けに出勤することが不可能になったUさんは、フランスから「帰れなくなったので今日明日は有給休暇を取得したい」と会社に連絡。すると上司は「海外旅行を楽しんでおいて、交通機関のトラブルで帰れないから休暇なんてけしからん」と怒ってしまったそうです。
納得のいかないUさん
そして「有給休暇は認めない。欠勤扱いにする」と言われてしまいます。自分の落ち度ではあるものの、有給休暇は社員の権利で、却下はおかしいとUさんは考えています。
このような会社の対応は法的に問題ないのでしょうか? 琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。
対応は適法なのか?
川浪弁護士:「原則として、有給休暇は、労働者の請求どおりに与えられなければなりません(労働基準法39条5項本文)。しかし、使用者は、有給休暇取得が「事業の正常な運営を妨げる場合」には労働者の求める日とは別の日に有給休暇を与えることができます(同項ただし書)。これを時季変更権といいます。
「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、例えば、その労働者にしかできない業務があり期日が迫っている場合や、繁忙期や決算期などで今の時期に休暇を取られると業務に多大な支障が出るような場合をいいます。
今回のケースでは、使用者が時季変更権を行使する理由が、単に(10連休に続けて休暇をとるなど)「けしからん」という業務の都合とは関係のないものであれば、労働者の請求どおりに有給休暇を取得させなければならず、欠勤扱いにすることは認められません」
取得却下が適法になるケースもある
川浪弁護士:「他方で、有給休暇取得を認めることで使用者に業務上の支障が生じる場合には、休み明けの勤務日当日に申請をしている点が問題になりうるでしょう。労働基準法上、時季変更権が認められている以上は、使用者には時季変更権を行使するかどうかを判断する時間が与えられるべきだからです。場合によっては、有給休暇の取得を認めなかったことが適法と判断される余地はあります。
今回のケースで「けしからん」と言って使用者が認めなかったのは、もしかすると、理由はどうあれ、労働者が有給休暇取得日の当日に申請したことが原因かもしれません。
このような労使間の無用な紛争発生を予防するためには、就業規則等で予め「有給休暇は取得日の○日前に申請すること」というようにルールを定めておくことが望ましいといえます。なお、この場合、就業規則等に定められたルールに基づいて期限までに申請する限り、労働者は有給休暇の取得理由を使用者に伝える必要はないことを付言しておきます」
なるべく避けたい連休明け当日の休暇申請
労働者としては交通機関のトラブルですから、やはり有給休暇を認めてもらいたいものですが、場合によっては欠勤扱いにすることが認められることもあるようですね。
連休明け当日に突然休みを申請することを、社会人の通念として好ましくないと取る人もいるようです。休むことは法的に問題ないことがほとんどですが、余裕をもって帰国するのがベターかもしれませんね。
*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)