日本はゲーム先進国。なかでも家庭用ゲーム機はファミリーコンピューターやスーパーファミコン、プレイステーションなど国民的な人気を誇りました。
そんなゲーム業界ですが、最近はスマホにシフトしているようです。人気作品が次々と移植され、熱中している人も多いのではないでしょうか。
ガチャビジネスには不満の声も
家庭用ゲーム機はハードやソフトを購入することで販売元は収入を得ていましたが、スマホゲームは「ガチャ」が主流。ゲームアプリ自体は無料で、「有利に進めるためにはアイテムを購入してね」というものです。
このガチャは、ルーレットのようなものが回り、止まったものが手に入るという手法になっています。誰もが欲しがるアイテムが「当たる確率」については、「重課金者」ほど当たりにくく設定し、課金を煽るような仕組みになっていると噂されています。
仮にこのような噂が事実だった場合、違法にならないのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解を伺いました。
問題はあるのか?
大達弁護士:「まず、運営会社が当選確率などを表示しているにもかかわらず、重課金者の課金額を増やすため、重課金者の当選確率がその表示された当選確率よりも低い確率となるよう設定されていたような場合には、運営会社が故意に重課金者に対して虚偽の当選確率を提示し、それを誤信した結果そのゲームに課金しているといえるため、詐欺罪(刑法246条1項)に当たり得ますし、民事上も詐欺に当たるとして、その表示に基づいてなされた課金につき取り消しができると思われます(民法96条1項)。
また、ガチャの当選確率などの事項はガチャを引く者にとっては重要なものであるところ、このような重要な事項の表示が事実と異なっており、その事項が事実であると誤認したことによってガチャを引いたものであるとして、消費者契約法に基づき、当該課金を取り消すことが考えられます(消費者契約法4条1項柱書、同項1号)。
このように、課金を取り消した場合には、運営会社には不当利得返還請求をして、課金相当額とそれに対する利息を請求することになるでしょう(民法703条、同704条)」
景品表示法違反の可能性
大達弁護士:「次に、ガチャの確率等につき、前記のような表示がされているような場合には、「実際のものより著しく優良であると示し」ているものであるといえるため、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)5条1号にも反するものであるといえます。
そして、このような場合には、運営会社が景品表示法に違反する行為をして、重課金者に課金相当額の損害を負わせたものとして、重課金者は運営会社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求ができると考えられます(民法709条)。また、消費者庁から措置命令等の行政罰が運営会社に対して課されることも考えられます。
もっとも、実際にこのような当選確率の操作をやっているのかどうかを立証するには運営会社側の内部の情報を手に入れる必要があり容易ではないことから、このような請求が認められる確率は、ガチャで一番のレアを引き当てるより低いものであるといえそうです」
違法となる可能性はある
立証がかなり困難ではありますが、意図的な重課金者への確率設定は違法となり得るようです。ガチャビジネスは子供による課金などの問題が指摘されています。今後、規制がかかることも十分有り得そうですね。
*執筆・法律監修: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)