ライバル会社に移籍しシェアを奪う元社員…損害賠償請求は可能!?

システム会社社長のMさんは、元社員の行動に頭を悩ませています。自社のシステムを導入している会社が次々とライバルのB社のものに入れ替え、シェアを奪われているのです。

 

元社員が営業を…

危機意識を持ったM社長は調査を開始。結果、元社員が、片っ端から営業をかけていることが発覚。Mさんの開発しているシステムの弱みを吹聴し、「うちのほうが優れていますよ」と営業しているそうで。

Mさんとしては自社の顧客リストが使われていること、営業の際にこちらのシステムを卑下するような発言をしていることを問題視。損害賠償などを求めたいと考えています。

このような場合、Mさんは不当性を訴えることができるのでしょうか?高島総合法律事務所の高島秀行弁護士にお聞きしました!

 

損害賠償請求は可能?

高島弁護士:「このようなケースは、よく問題となります。法律上問題となるのは下記の2点となります。

1 自社を退職したシステム営業社員が退職後に競合他社に就職することはできるか

2 退職後に元の顧客に営業をかけて取引をすることは許されるか

1は従業員が退職した後は、職業選択の自由があることから競合他社に就職することも自由となります。2についても退職後に元の顧客に営業をかけて取引することも、取引自由の原則が認められており、自由となります」

 

職業選択の自由や取引自由の原則から、元社員の行動に規制をかけることはできないようです。

 

防衛策はないの?

こうなるとM社長としてはなすがままで、困ってしまいます。防衛策などはないのでしょうか?高島総合法律事務所の高島秀行弁護士にお聞きすると…

高島弁護士:「1については、就業規則や雇用契約書で競合他社に退職後一定期間の就職を禁止する競業禁止条項を設けるという方法があります。

ただし、従業員には職業選択の自由が認められているので競業禁止条項が有効となるには、判例上、厳格な要件を満たす必要があるとされています。

具体的には①企業秘密を有する立場にあること、②期間地域が限定されていること、③競業禁止の対価が支払われていることの3つの要件を満たすことが必要と言われています。

なかなかこの要件を満たすことは難しいので、就業規則や雇用契約書で、競合他社に就職することは認めるが、元の顧客に対してのみ営業活動を行わないというかなり限定した条項にすることが考えられます。

また、営業活動で元の会社の有する顧客情報や営業に関する資料、データなどを持ち出して利用できないように、就業規則や雇用契約書で秘密保持条項を設定し、その条項通り管理しておくことが考えられます。

なお、元の顧客に対し営業活動を行う際に、元従業員が元の会社の誹謗中傷をしていた場合はもちろん損害賠償請求が可能となります」

 

自分の会社に所属していた社員がライバル企業に移籍することは多々あるようで、大企業などでは対策をしているケースがほとんどですが、中小企業では軽視している社長も多い様子。しかしその結果、シェアを奪われるなどして、会社の経営を揺るがすことになるかもしれません。

企業法務に詳しい弁護士の監修を仰ぎ、有効な防衛策を講じておくことが、最善策ですね。

 

*取材対応弁護士:高島秀行(高島総合法律事務所。相続・遺産分割をする前に読む本」「訴えられたらどうする!!」等の著作もあり、相続・遺産分割問題について詳しいベテラン弁護士。ブログ「資産を守り残す法律」を連載中)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

高島 秀行 たかしまひでゆき

高島総合法律事務所

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