【弁護士が解説!】営業車のドラレコ映像を無断でマスコミに提供したら懲戒処分を受ける?

1.厳罰に処すべきか?

女性タレントが飲酒運転の上、ひき逃げをしたとされる事件で、そのときの状況が映っていたドライブレコーダーの映像が公開されました。

実際にどのような経緯で公開されることになったのかはわかりませんが、仮に運送会社などの車に取り付けたドライブレコーダーのデータが会社から警察に提供され、警察からマスコミに公開されたのであれば、特に大きな問題はないでしょう。それでは、会社の車に取り付けた会社のドライブレコーダーのデータを、従業員が会社に無断で持ち出し、世間の注目を浴びるため、あるいは金銭受領目的で週刊誌などに持ち込んだというようなケースでは、会社との関係では何らかの処分を受けることになるでしょうか? このようなケースにおいて、会社としてはどう対応すべきなのか、考えてみたいと思います。

会社のドライブレコーダーのデータは会社の保有する情報ですから、従業員が勝手にこれを持ち出したり、第三者に漏洩したりすることはできません。仮に世間の注目を浴びることが目的であったり、金銭目的であったりした場合には、会社のものを勝手に売って利益を得たということになります。普通に考えれば、厳罰に処するべきということになりそうです。

 

2.会社の受ける損害は?

もう少しよく考えてみましょう。このようなケースでは、会社にどのような損害が発生するでしょうか。ドライブレコーダーのデータは、通常は特に事故などがなければ上書きされていき、消えてしまうものです。会社にとって、それ自体に財産的価値があるわけではありません。会社が受ける損害として考えられるのは、会社に対する社会的評価の低下です。報道されたようなケースでは、データを勝手に売ってしまうような従業員が勤めている会社である、それでも処分もしない会社である、と評価される危険があります。また、職場秩序を維持する必要もあります。このようなケースで厳しく処分しなければ、ほかの従業員も、「相当なお金がもらえる上にクビにならないのであればやった方が得」と考えるかもしれません。このようなことでは、職場秩序を維持できなくなってしまいます。

 

3.行為の必要性は?

一方、このような行為を行う必要性はあるでしょうか。事実を公にするという意味では、公益に資する面はあるかもしれません。しかし、会社がもみ消そうとしているような場合でもない限り、会社に無断ということはあってはならないことですし、データの提供先も警察とすべきでしょう。上記のケースでは、世間の注目を浴びたり、金銭を受け取ったりすることが目的ということですから、目的も不正なものといえます(そもそも、そのような目的を認定できるかどうか、という問題がありますが、会社に無断で、マスコミに提供し、実際に金銭を受領していたという事実が認定できれば、目的も認められると考えます)。

 

4.会社が取るべき対応は?

このように考えると、行為の必要性は認められない一方、会社の職場秩序を維持するためには、懲戒解雇を検討せざるを得ないように思います。ただし、会社に実害はないのではないか、このようなケースはレアケースではないか、一度出勤停止などの懲戒処分をして改善の機会を与えるべきではないか、といった反論(会社にとっては無効リスク)もあり得るので、退職勧奨して退職してもらう、という対応も実務的にはあり得るところかと思います。

 

筆/杜若経営法律事務所 岡正俊(【使用者側専門40年の圧倒的な実績】【市ヶ谷駅徒歩3分】【弁護士9名在籍】【総合力とチームワーク】杜若経営法律事務所は使用者側労働問題の解決に圧倒的な自信がございます。)

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