ある質問掲示板に、「ゲーム実況動画をアップロードする行為は、著作権侵害にならないのでしょうか?」という旨の書き込みがあり、話題になりました。
たしかに、著作者の許可なく著作物をアップロードする行為は、著作者の複製権・公衆送信権などを侵害します。
著作権侵害の可能性があるのに、
なぜ、実況プレイヤーは逮捕されないのでしょうか?
なぜ、動画は削除されないのでしょうか?
この記事では、ゲーム実況動画と著作権侵害の関係について解説していきます。
ゲーム実況動画をアップした際に侵害しうる著作権は次の2つ
大前提として、ゲーム実況動画をUPした際に、著作者のどのような権利を侵害しうるのか整理しておきましょう。
複製権…自分の作品(著作物)を勝手に複製させない権利
公衆送…信権 自分の作品を勝手にアップロードさせない権利
ゲームを録画する行為は複製権を、不特定多数に公開する行為は、公衆送信権を侵害している可能性があります。
ゲーム実況動画をアップしても、なぜ罪に問われないのか?
では、ゲーム実況動画をアップしてもなぜ罪に問われないのでしょうか?
ゲーム実況を許可しているゲーム制作会社もあるから
音楽業界などと比べると、ゲーム業界は比較的著作権に関して寛容な傾向があるようです。
例えば、プレイステーション4には、プレイ動画をYouTubeにアップできる機能がついていますし、任天堂には、“Nintendo Creators Program”という、ゲーム実況者と任天堂が広告収入をシェアするプログラムがあります。
ただ、すべてのゲームをアップロードしてよいわけではありません。
ゲーム実況動画を投稿する際は、Nintendo Creators Programのようなページから、利用可能なゲームを確認するとよいでしょう。
ゲームの宣伝になるから
実況動画がUPされることは、なにもゲーム制作会社にとってデメリットばかりではありません。有名な実況者が動画をUPした場合、10万回以上再生されることもあります。
制作会社からすれば、無料で宣伝ができることになり、なかには、企業から実況者にPRを依頼するケースすらあるようです。
ゲーム実況動画が問題になるのはどんなとき?
木川先生:
実況が許可されていないタイトルのゲームについては、上記のとおり実況動画のアップロードにより著作権侵害となり得ます。著作権侵害に当たり得るとしてもそれが黙認されてきた理由は、上記のとおりゲーム会社にもメリットがあるからです。バグプレイや、ストーリー性が重要なゲームなどでネタバレを行うプレイではなく、通常の実況動画であれば損害は発生していないとも考えられるからです。
実況動画をアップロードしようとする際には,まずは実況動画のアップロードが許可されているかを確認し、許可されていない場合は最低限、①黙々とプレイする等、ただの攻略・ネタバレ動画にはしないこと、②バグやゲーム会社が意図しない改変を加えたプレイ動画にしないこと、③有料コンテンツを無料で得られる方法など裏技を明かす動画にしないこと、には気を付けなければなりませんね。
なお、個々のゲームおよびゲーム実況動画によって著作権侵害の有無や侵害の軽微性は変わり得ますから、やはり確実に合法といえるのは実況が許可されているゲームの実況動画しかないでしょうね。
*取材協力弁護士:木川雅博(星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。企業法務(会社運営上生じる諸問題),売買代金・貸金請求,損害賠償・慰謝料請求,不動産を巡る法律問題,子どもの事故,離婚・男女間のトラブル,相続問題,破産・民事再生・債務整理,労働問題など,法人・個人を問わず様々な案件を扱う。)
*取材・文:アシロ編集部
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