近年は「終活」がテーマの番組もあり、この言葉を見聞きしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
終活と聞くとネガティブなイメージを持つかもしれませんが、前向きな気持ちで自分の人生の最期を決めたいという意志を持っていたり、家族の負担を減らすために行ったりとポジティブな側面も多くあります。
終活にあたり、遺言書の作成や葬儀の方法、墓の形式などいくつか考えるポイントがありますが、今回は遺言書の作成について解説してみたいと思います。
■遺言書とは
遺言書とは、人が生前に死後の自分の財産の行方や身上の事項の処理などについて行う「言い遺し」あるいは「書き遺し」のことを言います(床谷文雄・犬伏由子編『現代相続法』186頁)。
遺言がなければ、亡くなった人の法定相続人が法定相続分どおりに財産を相続することになりますが、遺言があれば、特定の相続人や相続人以外の第三者にのみ財産を相続させたり、遺贈することが出来ます。
■遺言書の作成方法
遺言の一般的な形式としては、遺言書の内容の全てを自署する「自筆証書遺言」と公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。
自筆証書の場合、遺言どおりに財産を相続するためには、遺言者の死後に家庭裁判所で「検認」という手続を経る必要があります。
一方で、公正証書遺言の場合には、「検認」手続を経る必要がないので、遺言者の死亡と同時に、遺言の内容に従って財産の相続手続をすることが出来ます。
なお、自筆証書であれ公正証書遺言であれ、遺言書は、生前に何度でも書き換えることが出来ます。再婚をしたり、孫が出来たタイミングなどで、従来の遺言の内容を書き換えるというケースはよくあります。
遺言が書き換えられた場合、新しい遺言が優先するので、新しい遺言と古い遺言が抵触する場合には、抵触する部分については、古い遺言は撤回されたことになります。
■遺言書作成のポイント
遺言によって、遺言者の財産を誰にどのように分けるかを自由に決めることが出来ますが、本来、遺言がなければ財産を相続することができたはずの相続人には、「遺留分」がありますので、遺言によって財産を取得した人は、遺言によって排除された相続人から、遺留分減殺請求権を行使される可能性があります。
遺留分減殺請求権を行使されると、不動産は遺留分減殺請求権を行使してきた相続人との共有状態になり、預貯金等についても遺留分に相当する金額を支払わなければなりません。
遺言者の死後、残された人たちの間で揉めることも少なくありません。トラブルが発生するのを防ぐためにも、本来の相続人の遺留分にも配慮した遺言内容にする必要があります。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
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