東京23区と武蔵野市、三鷹市ではタクシーの初乗りの料金が1月末から410円になる、ということをご存知でしょうか。2km以内の近距離の利用なら料金が安くなり“ちょい乗り”による需要創出が狙いだそうです。
そんな、価格も安くなり、利便性が増したタクシーですが、やはり、電車やバスと比べると料金は高いもの。
それでも終電や終バスがなくなってしまうと、タクシーを利用せねばなりません。「痛い出費」と感じながら、乗り込む人も多いことでしょう。
そんなとき、運転手がメーターを押し忘れていた。「しめしめ。黙っていよう…」とメーターの押し忘れに気づいているのについ黙ってしまうものです。
仮にそうなった場合、客に法的責任が発生するのでしょうか?エジソン法律相談所の大達 一賢弁護士に見解を伺いました。
Q.運転手がメーターを押し忘れているのを客が黙っていた場合、法的責任は発生する?
A.詐欺罪に当たる可能性があります
「“あれ? 運転手さん、メーター押し忘れているな……しめしめ” なんてこと、経験したことはありますか? メーターの押し忘れに気づいているのにこれを指摘しない場合、どのような法的責任が発生するか説明します。
この例に関連して、最高裁の判例をご紹介します。自分の口座に誤振込みがあった場合、誤振込みを知った場合には銀行に告知する信義則上の義務があり、告知せずに預金の払戻しを受けた場合には詐欺罪が成立する、とされています(最高裁決定平成15年3月12日)。
この最高裁の判断を前提とすると、本事例においても、乗客がタクシー運転手がメーターを押し忘れていたことに気づいていたにも関わらずあえて黙っていた場合にも、乗客は、「メーターを押し忘れていることを告知すべき信義則上の義務」に違反して、詐欺罪が成立すると言えそうです。
また、民事上も、信義則上の義務に違反したとして、不法行為責任を問う余地も出てくるでしょう。
法的な責任はもちろんのことですが、タクシーの運転手さんは、私たちの日常の足として日々活躍してくれるわけですから、メーターの押し忘れに気づいたときには、速やかに指摘をし、互いに気持ちの良いタクシー利用を心がけましょうね」(大達弁護士)
「黙っていれば安くなるかもしれない」と考えてしまうのが人間というものですが、代償が発生してしまう可能性もあるようです。「押し忘れてない?」と声をかけたほうが、後々不要なトラブルを避けることができそうですね。
*取材協力弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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