「任意の交渉段階が大事…」弁護士が教える「男女問題」を円滑に解決する方法とは

photo by 編集部

元銀行員という異色のキャリアを持つ天野弁護士。現在受けている依頼の中でも一番多いという「男女問題」について、どのような解決方法を実践されているのか、お話を伺いました。

天野 仁(あまの ひとし)弁護士
東京都・新宿区にある「弁護士法人ステラ」の天野仁氏は、17年間、銀行員としてキャリアを積んだ異色の経歴を持つ弁護士。本人になりかわれるくらいに相手を知って弁護に臨みたいというスタンスで、その誠実さには定評がある。

■裁判官は世論には影響されにくい!?日本は「判例主義」が大前提に

___男女問題について、最近の傾向を教えてください。

男女間のトラブルというのは、いつの時代もありますので、特に傾向があるとは思いません。社会が変わっているからといって、判決に違いがでるかというと、家庭裁判所はそんなに変わっていないのではないかと思います。

親権に関していうと、母性優先の原則というものがあります。従って、離婚裁判で、男親は親権を取りにくいといった状況は、今も変わりありません。女性が弱い立場であることが多いという理由もあって、男女問題では、親権に限らず、基本的に女性寄りの判断が下されることが多いように思います。

離婚問題や男女問題などは、“ある人はこれが許せるけど、ある人はこれが許せない”という状況が起こりがちです。例えば、離婚できるのは、民法第770条第1項第5号で「婚姻を継続し難い重大な事由(離婚原因)があるとき」と規定されています。従って、当事者間で問題とされていることが、離婚原因に当たるかどうかを裁判所が最終的に判断を下すわけです。

判断の根拠は、常識や倫理観などに依ります。その背景は、世間では何を普通と考えているかということを、裁判官が、どう読むかということも含まれます。しかし、“裁判官は世論にはなかなか流されない”というのが、私個人の印象です。

___最近では「不倫」に対して厳しい世論が多い印象ですが裁判への影響はないですか?

確かにネットなどでは特に不倫に対して厳しい意見が出されることが多いですが、日本は判例主義ですので、それまで起こった同様の事例を考慮するという縦軸においても公平を図るという考えが根強いのです。そうすると、今までの判断を変えるようなドラスティックな判決というのは、なかなか生まれないのです。

従って、慰謝料などの相場も、だいたい決まっています。不倫に関していうと、例えば、夫が不倫して、妻が慰謝料請求するというケースでは、離婚をする方向であれば約200万円、離婚しない方向であれば約100万円あたりで、多くても300万円です。この相場は、妻にしてみれば安すぎると感じることが多いでしょうし、夫からすれば高いと感じるかもしれません。

 

■不倫問題は「SNSのやりとり」など具体的な証拠集めが焦点に

___不倫問題を解決するために、相談者が準備すべきことや、必要な期間などの対処法を教えてください。

不倫の慰謝料を請求したい場合で考えてみましょう。不倫の場合、まず証拠が重要となります。証拠として最近多いのはLINEをはじめとしたSNSのやりとりです。LINEのメッセージ画面などをスクリーンショットなどで写真を撮って証拠にするというようなことは多いですね。メッセージのやり取り以外にも、携帯やスマホに残された写真、動画が残っていることも多いです。あとは、探偵事務所を雇って、調査報告書を持ってくる人もいます。

慰謝料の金額にも関係してくるので、不倫が行われていた期間・回数も証明できる証拠だと良いですね。一度きりの関係なのか、長年関係が続いていたのかで、不倫されてきた側の精神的な損害は変わってきます。とはいえ、なかなか、昔の証拠を今から集めるというのは難しいことですので、ある程度の証拠が確認できているのであれば、話し合いや裁判の準備はできていると判断して問題ないです。

 

■「訴訟告知」制度を使って不倫裁判を和解の流れに

___不倫問題を解決するために工夫されていることは何でしょう?

不倫の場合は法律的には、損害賠償請求事件になります。ですから、まずは任意で相手と交渉してみて、ダメだったら裁判を起こすという流れになってきます。裁判になれば淡々と手続きに従って対応していくことになりますが、任意の交渉段階では、弁護士次第なところがありますので、弁護士選びは非常に重要になります。 私は過去に、不倫をした女性が、不倫相手の男性の妻に関係を知られた結果、「夫と二度と会わない、約束を破ったら200万円を支払う」といった念書を書いたにもかかわらず、また会ってしまったというケースを弁護したことがあります。

民法420条1項に「賠償額の予定」という規定があり、念書などで損害賠償額の予定を約束した場合は、裁判所は賠償額を増減することはできないと定められています。従って、この事件は、“念書がある”というかなり不利な状況でしたが、私は交渉で粘った結果、慰謝料を1/10の20万円にまで減額できました。

___裁判までいったケースではどんな解決法を取られましたか?

裁判になった例として、不倫をした男性の妻から不倫相手の女性だけが訴えられたケースで説明します。この場合、不倫をした男性側にも「訴訟告知」をしますね。不倫というのは、共同不法行為ですので、責任割合によって相手に求償することが可能だからです。民事訴訟法では、訴訟告知を行っておけば、裁判の判断内容が次の求償裁判の際の前提になるためです。

不倫した男性の妻としても、離婚はしない考えの場合が多いものです。その理由として、今後も夫の収入をあてにして生活していこうと考えているからです。ですから、自分の夫を被告にはしたくないという人も少なくありません。そうすると、結局次の求償のことを考えれば、全額ではなくて、例えば、半分の額で和解しませんか、という流れになることが多くなりますね。

不倫は不法行為ですので、決して褒められたものではありませんが、弁護士は不倫をされた側だけでなく、不倫した側も助けることができます。上記の例でも、訴えられたり、念書を書いたりする前に、早めに弁護士に相談に来てくれれば、リスクを最小限に抑えることができたと思いますね。

 

 

*取材協力弁護士:天野 仁(あまの ひとし)弁護士
1967年生まれ、神奈川県出身。神奈川県立川和高等学校卒業。早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院法務研究科修了。みずほ銀行に17年間勤務し、その間、法人・個人営業、外為・デリバティブ業務、インターネットバンキング開発などを担当。主な取扱分野は、離婚・男女問題、相続、破産、交通事故、金融商品被害、労働事件、企業法務、刑事事件など。これまでの経験を活かしつつ、親切・丁寧な対応を心がけて弁護活動に取り組んでいる。また、「弁護士法人ステラ」では、優秀なスタッフを要し、一般民事・家事事件・刑事事件等の個人の法律問題から、取引紛争・事業再生・倒産事件・知的財産権・労働法務等の専門性のある企業法務に至るまで、クライアントに最良のリーガルサービスを提供できることを旨とし、日夜邁進している。

*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)

【画像】

*編集部

*天野弁護士のインタビュー記事

銀行員から転身…異色のキャリアを持つ弁護士が「交渉・折衝力」を大切にする理由とは

天野 仁 あまのひとし 弁護士

弁護士法人ステラ

東京都新宿区左門町4番地 四谷アネックス5階

コメント

コメント