ジェットコースターなどに乗ると、乗車中の様子が走行中に撮影されて出口などで販売されている、ということによく遭遇します。
入口で写真撮影があるという注意喚起がされれていることもありますが、ない場合は、いわば勝手に撮影され、しかも売られるということになります。
法的に、このような運用にプライバシーや肖像権の点から問題はないのか、これからはじまるシルバーウィークに遊園地などにお出掛けされる方も多いでしょうから、改めて考えてみましょう。
■プライバシー侵害かどうかは「公開」されている事実が必要
プライバシー侵害といえるには、ごく簡単にいえば、私生活上の事実が公開されることが必要です。ジェットコースターに乗っていることは私生活上の事実でしょうから、プライバシーとは言い得ると思います。
しかし、これが「公開」されたといえるでしょうか。
たしかに、出口では一緒にジェットコースターに乗ったその他の人たちのいる前で写真が掲載されていることが通常です。しかし、一緒にジェットコースターに乗っていた以上、その人たちとの関係でジェットコースターに乗っていたということを隠すような必要はありません。
そして、遊園地などの運用次第ではあると思いますが、ふつうは、撮った写真をどんどん削除していると思われます。
したがって、「公開」されているとはいえないため、プライバシー侵害があるということはできないということになります。
■では肖像権侵害は成立し得るのか?
肖像権とは、みだりに他人から写真を撮影されたり、それを公表されたりしないよう対世的に主張できる権利です。このことから分かるとおり、肖像権には次の2つが含まれます。
1.みだりに撮影されない権利(撮影の拒絶)
2.撮影された写真等をみだりに公表されない権利(公表の拒絶)
公表の拒絶については、先に述べたように、公表されているわけではないので問題ないといえます。
では、撮影の拒絶という点はどうでしょうか。入口に注意書きがあれば、それを知りながら乗ったといえるので問題ないといえます。
注意書きがない場合は、撮影されたくないと考える人からすれば、撮影の拒絶という意味での肖像権を侵害していると言い得ることになります。ただ、ジェットコースターなどでは、撮影されることがいわば「普通」です。
そのため、撮影されることを理解していたり、撮影されることを予想していた場合には、それでもジェットコースターに乗ったということで、「撮影を許容していた」と解釈できます。
また、おそらく写真をすぐに削除しているという事情もあることから、仮に撮影を予想していなくても、実質的な意味での違法性はほとんどないといえます。したがって、肖像権侵害があるということも難しいと考えます。
難しく考え出すと難しくなっていきますが、遊園地などでは難しいことを考えずに楽しむのがよいかもしれないですね。
*この記事は2014年7月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
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