病気、失職、連帯保証人になってしまった、生活費等のために多額の借入れをした…。理由は様々でしょうが、何らかの原因に悩みに悩んで決断する選択肢のひとつに自己破産という方法があります。
お金がないから自己破産を選択するのでしょうが、実は自己破産をするにもある程度まとまった額のお金は必要になってきます。
「お金がないから破産したい。破産するお金がない。」ということになりかねないわけですが、自己破産をするのにいくらぐらいのお金が必要になるか解説していきたいと思います。
■最低でも40万円程度の費用がかかる?
一般的な自己破産の申立てには、印紙代1,500円、郵便切手代4,100円、裁判所への予納金(管財人費用等)約22万円、弁護士費用15万円~40万円の合計の金額が必要になります。
お金がないから自己破産をするのにこんなにお金が必要になるのかとお思いになるでしょう。
もちろん、「一般的な」とあるように、すべての自己破産で40万円程度のお金が必要になるわけではありませんので、もう少し詳しく解説していきます。
■同時廃止事件とは?
同時廃止とは、破産をする人に財産がないことが明らかである場合、管財人を選任せず破産手続開始決定と同時に手続を終了してしまうことをいいます(なお、免責許可は同時ではありません。)。
破産手続は破産者の生活の再建を図るとともに適正に破産者の財産を債権者に対して分配する手続ですので、同時廃止は法律上例外的に認められています。
そのため、破産者がオーバーローンではない不動産を有しているときや預貯金、解約返戻金、退職金等が20万円以上あるときは同時廃止として処理することはできません。
また、破産者が法人・個人事業主の場合や、浪費や財産隠匿の程度が大きく調査を要するときにも同時廃止にはなりません。
例外的事情が認められて同時廃止になるのであれば、裁判所への予納金は約1万円で済み、費用は約21万円安くなります。
■自己破産で弁護士を付けるべき?
裁判所への予納金とともに高額なのが弁護士費用です。法律上は弁護士を付ける必要はありませんので、自分で破産の申立てをするのであればさらに15万円~40万円の費用がかからなくなります。
ではなぜ自己破産の申立てで弁護士に依頼することがあるかというと、(1)債権者からの督促が止まる、(2)手続が早く終わるため早期に生活の再建が図れる(とくに東京の場合ですと申立ての日に破産手続終結ができる制度運用がありますが、これは弁護士に依頼した場合に限られます。)、(3)弁護士は免責許可を得るためのポイントを把握している、(4)過払い金や時効にかかっている債務を調査できる、(5)裁判所へ行く回数が減るというメリットがあるからです。
そのため、明らかに同時廃止が見込まれ、浪費などの免責不許可事由もなく、書類作成や裁判所へ足を運ぶことを厭わない方であるような場合であれば、自分で破産の申立てをすることに挑戦されるのもいいかもしれません。
■弁護士を付けたいけれど弁護士費用を一括で払えない方へ
このような方には、日本司法支援センター(法テラス)の代理援助という制度があり、一定の収入要件を充たす方であれば実費や着手金の立替払いを法テラスが行ってくれます。
もっとも、立替払いなので、原則として援助金の決定が出てから約2か月後から月額5,000円~10,000円程度を償還していく必要はあります。
以上は、東京地裁での運用をもとに個人の自己破産の費用を説明しています。他の裁判所では費用や制度が異なることがありますので、わからないことがあったときは裁判所や弁護士、法テラスへお問い合わせいただければと思います。
*この記事は2015年1月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)
*参考:民事法律扶助
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