もう20年以上前のことになりますが、私の大学入学時に、半ば強制的にサークルに加入させられ、言われるがままに会費を支払わされたという苦い記憶があります。
このサークルの会費というのは何となく支払うことになっているが、金額や支払い時期などがあいまいになっていることが多いと思われます。そんな状況で、会費を滞納している部員に法律上会費の支払いを強制することができるのでしょうか。
●お金を払う、ということの意味
そもそも人がお金を支払わなければならない場合とは、法律上その支払いを了解した場合に限られます。
たとえばコンビニでパンを買うときは金額を確認し、その支払いを了解した上でレジでお金を支払い、引き換えにパンをもらうわけです。お金を払いたくなければ支払う必要はありませんが、そのかわり、もちろんパンをもらうことはできません。
サークルの会費も理屈は同様です。会費の支払いを了解し、それと引き換えにサークルに加入することを了解した場合に限り、会費の支払い義務が発生することになります。ですので、そもそも会費の支払い義務を知らなかったとか、支払い義務があることは知っていたが金額は知らなかったという場合は会費の支払い義務はありません。
●サークルの場合はどうなる?
ただ、サークルの場合は入会時にそもそも会費支払い義務があるか否か、支払い義務があるとしていくらかということが明示され、それを了解した上で入会するケースはあまりありません。
ですので、現実的には、サークルに入会し、他の部員や上級生より会費の請求がされた時点で会費を支払いたくなければ支払わない代わりに退会、加入を継続したければ会費を支払う、という選択をすることになるでしょう。
もし会費の支払い義務があることを知った後に、それでも会費を支払いたくないという場合には、先ほどのパンの例と同じく、当然そのサークルに加入し続けることはできません。会費を滞納しているにもかかわらず退会しないのであれば、サークル側としては会費を強制的に支払わせるか、もしくはその部員を強制退会させるかをすることが出来ます。
とはいうものの、大学のサークルという私的でかつ比較的小規模な団体内で、しかもそれほど高額になるとは思えない会費をめぐって裁判所で争うことは決してお勧めできませんし、また法的解決になじむとも思えません。やはり当事者間の話し合いで解決すべき問題であると思われます。
そして、このようなトラブルを防ぐためにも、サークル側としては加入前かもしくは加入後ただちに会費の支払い義務及び支払い義務があるとしたらその額を新入部員に告知すべきではないでしょうか。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)