隣の家に住む女性が野良猫への餌付けを続けたため、排泄物で自宅の庭が汚されたなどとして、女性に対して約160万円の損害賠償を求めた事件で、慰謝料など55万円の支払いを命じた判決が福岡地裁でありました。
記事によると、女性は、自宅の玄関前に餌を置くなどして複数の野良猫に餌やりを継続していたところ、野良猫は、女性宅の玄関前だけではなく、原告宅の庭にまで入り込んで、排せつなどしていたようです。
裁判官は、女性は、餌やりの中止や屋内飼育を行うべきだったとし、近隣住民への配慮を怠り、生活環境を害したという理由で、原告の請求を認めました。
●動物愛護だとしても他人に迷惑をかけて良いわけではない
野良猫に対する愛情から、野良猫に餌をあげることは一般的には悪いことだとは思いません。しかし、いくら野良猫がかわいいからと言って、他人に迷惑をかけることまでは許されません。
女性としては、自宅の玄関前で野良猫に餌をやれば、その猫が隣家の庭に入り込む可能性があること、隣家の庭で排泄行為等をする可能性があることを当然予見することができたはずですし、そのようなことを防止するための手段を講じるべきでした。
そのため、女性としては、隣家に迷惑をかけないという手段を講じる義務を怠り、そのために隣家に損害を与えたのですから、本件は、女性が損害賠償義務を負うのはやむを得ない事案だったと考えます。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)
*画像:akashi / PIXTA(ピクスタ)