刑事事件にはなぜ「公訴時効」があるのか?

「時効直前に犯人を逮捕」というニュースが稀に報道されます。

これは、犯罪類型に応じて、犯罪終了時から一定期間の経過により、検察官が公訴提起できなくなる制度です。検察官が起訴できないということは、有罪となり、処罰されることもありません。

しかし、現在では殺人罪の公訴時効は廃止されています。

また、国外逃亡中は、公訴時効の進行が停止しますので、国外逃亡により、公訴時効を完成させることはできません。

Sergey Nivens逃亡

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■公訴時効はなぜあるのか?

刑事の公訴時効は、証拠が散逸して立証が困難となること、ひいては誤審の防止や国民の処罰感情の希薄化、刑事処罰による類似犯罪防止の効果が薄まることなどが存在理由とされています。

また、長期間の逃亡生活により、犯人には事実上の社会的制裁が加わっているという点が理由として説明されることもあります。

もっとも、遺族や国民の処罰感情は時の経過により簡単に薄まるものではないし、証拠物の散逸についても近年のDNA鑑定技術の進歩により正確な立証が可能になっているとの考え方も根強く、殺人罪などの公訴時効廃止へとつながりました。

そのため、現在では、刑事事件の公訴時効は以下のとおりとなっています。

 

■時効までの期間

(1)公訴時効なし

殺人罪など「人を死亡させた罪」のうち、法定刑の上限が死刑の犯罪

(2)30年

強姦致死罪など「人を死亡させた罪」のうち、法定刑の上限が無期懲役・禁錮の犯罪

(3)20年

傷害致死罪など「人を死亡させた罪」のうち、法定刑の上限が20年の懲役・禁錮の犯罪

(4)10年

自動車運転過失致死罪など「人を死亡させた罪」のうち、法定刑の上限が懲役・禁錮で、上記(2)・(3)以外の犯罪

 

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■刑罰の時効もある

公訴時効とは別に、判決で刑罰の言渡しを受けた者が、一定期間刑の執行を受けないことにより、刑罰権が時効となり、もはや刑の執行を受けないという制度もあります。

例えば、無期懲役の判決を受けた後、30年間経過すると、刑の時効となり、刑の執行を受けなくなります。

民事の時刻制度もそうですが、刑事の時効制度も、時代や世論の変化に対応して、刑事政策判断で改正が可能です。

事実、刑法典制定以来存在していた公訴時効制度は、被害者遺族らの活動により、死刑などの重大犯罪に限って廃止の法改正が実現されました。

今後も、刑事の時効制度は社会の変化に応じて、議論されていくことになるでしょう。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)

*写真:Shutterstock / Sergey Nivens

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星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1‐21‐8 弁護士ビル303

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