無料のアダルトサイトを見ていて、いろいろな画面をクリックしてしまったところ、勝手に変なページに飛んでしまい、高額な金銭の請求をされたが本当に支払わなければならないのか、このような相談が急増しています。
俗にいうワンクリック詐欺ですが、仮に自分の氏名や電話番号を記載してしまった場合は法的に料金の支払い義務が発生するのでしょうか。また、裁判を提起されたりすることはあるのでしょうか。
●どのような時に契約が成立するのか
そもそも、アダルトに限らず、ネット上の映像を見て料金を支払う義務が発生するケースですが、これは法律上その旨の合意があり、契約が成立した場合のみです。つまり、映像の内容と料金の額を把握し、それを了承した上で申し込みをした場合に限り契約が成立し、料金支払い義務が発生するのです。
ですので、何も知らずに画面をクリックしただけでは合意していないことは明らかであり、契約は成立していませんから、料金を支払う必要はありません。もちろん、氏名や住所、電話番号などを記載したとしても、合意したわけではありませんので、料金支払い義務はありません。
よく、「動画視聴契約が成立していますので料金をお支払いください」「退会手続きが終了しておらず料金が発生していますのでお支払いください」などという文言が表示される場合がありますが、これらは法律上全く虚偽、無効です。
というわけで、ワンクリック詐欺については、基本的には業者からの金銭要求を無視していればそれで問題ないのですが、ただ、「お支払いがない場合には、民事訴訟等の法的措置を取った上、貴殿の住居、職場を調査し、差し押さえ等の手続きに入らせていただきます。」などという記載があると、今後どうなってしまうのか、差し押さえされないように金銭を支払った方がいいのか、などと非常に不安になる方もいらっしゃると思います。
不安になってお金を支払ってくれれば業者の思うつぼ、ということになるのですが、実際のところはどうなのでしょうか。
●詐欺業者が裁判をすることはありえない
民事訴訟を提起する際には、会社であれば裁判所に法人の登記簿を提出しなければなりません。ところが、ワンクリック詐欺の業者は当然法人登記などしているはずはありませんので、登記簿を提出することはできず、訴訟提起することはできません。
そもそも詐欺業者が裁判所などにのこのこ出頭してくれば、即逮捕となるでしょう。ですので、詐欺業者が裁判をすることなどありえないのです。
要は、法律上料金の支払い義務はなく、また、法的措置を取ることなどありえないので、ワンクリック詐欺は無視していれば問題ありません。ただ、そうはいってもどうしても心配ということであれば、お金を払ったり個人情報を開示したりする前に、弁護士に相談すれば万全でしょう。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)
*Graphs / PIXTA(ピクスタ)