■懲戒解雇になる可能性は?
履歴書に「盛った」内容を書いていたら、就職後に実は違うことがバレてしまった場合、クビ、つまり懲戒解雇となる可能性はあります。
もちろん、どんな軽微な経歴の「盛り」であっても常に懲戒解雇となるというわけではありません。
懲戒解雇となるのは、労働者の採否や雇用後の労働条件を決定するに際して影響を及ぼすような事項で、雇う側として、もし「盛った」内容について真実を知っていたのなら、その人を採用していなかったようなレベルのウソである場合です。ちょっと分かりにくいですかね。
例えば、ある業種につき、「業界未経験者」ということが採用条件となっている場合に、実際は経験があるにもかかわらず、「未経験」と偽って履歴書に記入したような場合、明らかにアウトでしょう。
「大卒」が採用条件となっている場合に、短大卒にもかかわらず「大卒」と履歴書に記入しても懲戒解雇の対象となり得ると思います。逆に、「高卒」が採用条件となっている場合に、実際は大卒であるにもかかわらず「高卒」と履歴書に記入した場合も同様です。
では例えば、前職で「Aプロジェクト」という企画の手伝いをしたという経歴のある人が、「Aプロジェクトのリーダー」だったと経歴を「盛った」場合はどうでしょうか。こういうレベルの「盛り」の場合は、ケースによって結論が異なり得ると思います。
例えば、採用する側が、「Aプロジェクト」と同様のプロジェクトを推進していこうとしていて、「Aプロジェクトの元リーダー」という経歴を決め手にして採用した場合であれば、懲戒解雇が有効となりやすいでしょう。
一方で、採用する側が、特段「Aプロジェクト」とは関連性のない会社で、「盛った」経歴を特段重視せずに採用を決めたような場合であれば、懲戒解雇にすることは難しいでしょう。
面接において、雇用を希望する側が自分を良く見せようとすることは十分あり得ることですので、採用する側はそういったことを念頭に置いて慎重に採否を決めるという意識も必要かなと思います。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)
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