日本年金機構での個人情報流出事件において、「機構職員のみが知りうる内部情報が2ちゃんねるに書き込まれていた」ことが守秘義務違反であるとして告発を検討していると報じられています。
機構の職員とみられる人物が2ちゃんねるの「公務員板」などのスレッドに、情報流出公表前に「ウィルス感染しましたので、共用ファイルは利用禁止となりました」「月曜日には、ウィルス感染を公表するのかな?」など、内部情報とみられる内容を書き込んでいたようです。
この件は果たして守秘義務違反といえるのでしょうか。
■「日本年金機構法」という法律がある!
法律に基づいて設立されている団体の場合、その設立の根拠となる法律があるのですが、年金機構については「日本年金機構法」という法律があるようです。
この法律の中には、「役職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。」という定めがあります。
今回の件では、これに違反しているのではないか、ということのようです。
■「秘密」に当たるのか
「職務上知ることのできた秘密」とはどのようなものを指すのか調べてみたのですが、解説しているものは見当たりませんでした。
一般的な法律の意味で言えば、「秘密」とは外部に未だ知られていないもので、秘密として管理されているものであることが、少なくとも必要だろうと思われます。
ウイルスに感染したことや、ウイルスに感染して共用ファイルが利用禁止になったといったことは、外部には未だ知られていなかったとはいえるのでしょうが、これが秘密として管理されていた情報といえるのか、個人的には疑問があります。
また、詳細な情報ともいえない内容であることや、そもそもウイルス感染をしているということが「秘密」に当たり得る内容といえるものか、という点でも疑問があります。
したがって、感覚的な話で申し訳ないのですが、守秘義務の観点から問題があるとは抽象的に言い得るとしても、警察・検察がこれを「処罰に値するほどの違法性がある」と判断するかは、微妙ではないかと考えます。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*画像:日本年金機構 職員スレ★25 のスクリーンショット